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パワハラ防止法に対応するための就業規則作成のポイント

2021.12.21

山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。
今回は「パワハラ防止法に対応するための就業規則作成のポイント」についてお伝えします。
中小企業に対しパワハラ防止法が施行されるのは、2022年4月1日。施行期日が迫っていますが、すでに対応がおすみでしょうか。
「まだ対応できていない……」「対応方法がわからない……」とお悩みの事業者の方は、ぜひこの記事をご覧ください。

パワハラ防止法とは?

「改正労働施策総合推進法」いわゆる「パワハラ防止法」は、企業にパワハラの防止とその対策を義務付けた法律です。
大企業ではすでに2020年6月1日より施行され、パワハラ防止法に基づく取り組みがはじまっています。2022年4月1日からは中小企業もパワハラ防止法の対象となりますので、対応が必要です。

パワハラ防止法の施行により、企業に対して以下の3点が義務付けられます。

  • ・パワハラ防止に対する社内指針を明らかにし、従業員に周知させること
  • ・パワハラに関する苦情や相談に対応できるよう、体制を整えること
  • ・【パワハラが発生した場合】被害を受けた従業員のケアと再発防止に努めること

パワハラ防止法は、すべての従業員が気持ちよく働ける環境を作るためのもの。企業としてもしっかりと取り組む必要があるでしょう。
パワハラ防止法についての詳しい解説は「パワハラ防止法とは?2022年4月の法改正への対応方法」をご覧ください。

パワハラ防止規程は就業規則で定めるべき?

パワハラ防止法に基づく厚⽣労働大臣の指針では、事業者に対し

・パワハラ言動を行った人に厳正に対処すること
・パワハラ言動に対する対処方法
を就業規則などの文書に定めることを義務付けています。

「パワハラ防止法について、何から対策をすればよいかわからない……」とお悩みの事業者の方は、就業規則にパワハラ言動に対する対処方法を定めることからはじめてはいかがでしょうか。

ハラスメント対策に関して、弊所でも多くの事業者からご相談をいただきますが、まずは社内ルールの見直しとして就業規則の見直しをご提案させていただいております。中小企業にパワハラ防止法が施行される前に、就業規則を変更しましょう。

パワハラ防止に関する規程の作り方

パワハラ防止法が施行するまでに、就業規則の必要性について解説いたしました。
では、具体的にどのように「自社の方針」や「パワハラ発生時の対処方法」について就業規則や社内ルールとして整備すべきなのでしょうか。
これらの内容についても、就業規則に定めておくというのもひとつの方法です。
そのほか、就業規則以外の文書で定めることもできますので、ここでは別文書で規定する方法を2タイプご紹介します。

就業規則に委任規定を設け、詳細は別に規定する

1つ目の方法が、就業規則に「詳細は『パワハラ防止に関する規程』に定める」などとして、別の規程を作成することです。この場合、別文書で作成された「パワハラ防止に関する規程」も就業規則として見なされます。

別文章で作成する場合、従業員の方に「ハラスメントについてしっかりと対応を進めている」と周知・説明がしやすいだけでなく、随時見直しもしやすいなどメリットもあります。

労使協定を締結する

2つ目の方法が、事業者と従業員が共同でパワハラ対策の協定書を作成することです。労使が協力してパワハラ対策に取り組むことになるので、社内のパワハラ防止に大きな効果をもたらすでしょう。

パワハラ防止を就業規則などに定めるときのポイント

ここからは、就業規則や協定書に、パワハラ防止について定めるときのポイントを紹介します。
社内でパワハラ問題が生じた場合にスムーズに対応するためにも、ポイントを押さえて就業規則などを作成することが大切です。

労使間で合意してから追記する

就業規則を改正する場合には、変更の手続きが必要です。
就業規則を変更するためには、労働基準監督署長への届け出が必要となります。このとき事業者は、従業員の意見を聞き、書面にまとめて提出することが必須となっています。
就業規則を変更するときは、労使間でパワハラ防止の内容について合意してから行うようにしましょう。

定めるべき内容を網羅する

就業規則などにパワハラ防止規程を盛り込む際、記載しておくべき内容は以下の通りです。

  • パワハラを行ってはならないこと
  • パワハラの具体的な内容
  • パワハラを行った人に対する懲戒
  • 相談・苦情への対応
  • 再発防止の義務

参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が 事業主の義務になりました︕」34~35ページ

これらをもれなく記載しておくことが必要です。すでにパワハラ防止規程を作成している場合も、上記すべてが網羅されているかどうか、再度確認しておくと安心でしょう。

パワハラ内容は具体的にわかりやすく記述する

トラブルが生じた際、その言動がパワハラに該当するのかどうか判断しにくいというケースは多くあります。
そのため、就業規則などに定めるときには、どのような言動がパワハラに該当するのかを具体的に記載しておくことが必要です。
とはいえ、現場に即した具体的なパワハラ言動を網羅することは難しいもの。そこで、下記に紹介する「人事院規則」を参考にしてみてはいかがでしょうか。
人事院規則は国家公務員に適用される規則であるため、そのまま一般企業に適用するには不便な部分もあります。そのような部分は、自社に適応させながらパワハラ言動について考えてみてください。

パワー・ハラスメントになり得る言動(人事院規則より)

パワー・ハラスメントになり得る言動として、例えば、次のようなものがある。

一 暴力・傷害

ア 書類で頭を叩く。
イ 部下を殴ったり、蹴ったりする。
ウ 相手に物を投げつける。

二 暴言・名誉毀損・侮辱

ア 人格を否定するような罵詈雑言を浴びせる。
イ 他の職員の前で無能なやつだと言ったり、土下座をさせたりする。
ウ 相手を罵倒・侮辱するような内容の電子メール等を複数の職員宛てに送信する。
(注)「性的指向又は性自認に関する偏見に基づく言動」は、セクシュアル・ハラスメントに該当するが、職務に関する優越的な関係を背景として行われるこうした言動は、パワー・ハラスメントにも該当する。

三 執拗な非難

ア 改善点を具体的に指示することなく、何日間にもわたって繰り返し文書の書き直しを命じる。
イ 長時間厳しく叱責し続ける。

四 威圧的な行為

ア 部下達の前で、書類を何度も激しく机に叩き付ける。
イ 自分の意に沿った発言をするまで怒鳴り続けたり、自分のミスを有無を言わさず部下に責任転嫁したりする。

五 実現不可能・無駄な業務の強要

ア これまで分担して行ってきた大量の業務を未経験の部下に全部押しつけ、期限内に全て処理するよう厳命する。
イ 緊急性がないにもかかわらず、毎週のように土曜日や日曜日に出勤することを命じる。
ウ 部下に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる。

六 仕事を与えない・隔離・仲間外し・無視

ア 気に入らない部下に仕事をさせない。
イ 気に入らない部下を無視し、会議にも参加させない。
ウ 課員全員に送付する業務連絡のメールを特定の職員にだけ送付しない。
エ 意に沿わない職員を他の職員から隔離する。

七 個の侵害

ア 個人に委ねられるべき私生活に関する事柄について、仕事上の不利益を示唆して干渉する。
イ 他人に知られたくない職員本人や家族の個人情報を言いふらす。
引用元:人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)の運用について

罰則規定や処分についても明確にする

パワハラが発生した場合、処分の内容についても迷いやすい部分です。そのため就業規則などには、罰則や処分内容についてもできる限り明確に規定しておきましょう。
「〇〇な言動を行ったときには△△の処分をする」といったように、パワハラ言動と処分内容を関連付けて記載しておくと、トラブルになった場合にも速やかに対応できます。
また、このような記載方法なら判断基準が明確なので、従業員にもわかりやすいでしょう。

パワハラなどのハラスメント防止に関する規定例も参考にしよう

自社で一から規程を作成することは、非常にハードルが高いものです。そんな場合には、規定例を参考にしてみてはいかがでしょうか。こちらのページにはハラスメント対策に役立つ複数の規定例が紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。
通常業務のかたわら、パワハラ対策の規程を作成するのは、時間的にも労力的にも難しいもの。それに加え、専門外の作業に不安を抱えている事業者の方も多いのではないでしょうか。
社会保険労務士法人中込労務管理では、企業の状況に応じて、パワハラ防止法に対応するための就業規則などの作成をご提案させていただいております。ぜひご相談ください。

パワハラ防止の就業規則などを作成したら従業員への周知も忘れずに

パワハラ防止について就業規則などに明記した後は、その内容を従業員に理解・運用してもらうことが重要です。
いくらルールを策定しても、形ばかりになってしまっては意味がありません。会社と従業員が一丸となって「パワハラが起こらない環境を作る」という風潮になることが、労働環境の向上につながります。
また、パワハラ防止についての規則をうまく活用するためには、そのルールが自社に合ったものであるのか検討する必要もあります。規則を従業員に周知させ実行していくことで、定めたものが適当であるかを検討できるでしょう。
このように、パワハラ防止についての内容を就業規則などに定めたから任務完了、というわけではありません。
今後は、定めた規則を適切に運用していくことが大切になるのです。

まとめ

2022年4月1日からはじまる中小企業でのパワハラ防止法施行まで、残りわずかとなりました。中小企業の事業者の方は期日までに、スピーディかつ正確に対応を進めることが必要でしょう。
今回解説しました「パワハラ防止法に対応するための就業規則の作成」について、少しでも難しいと感じられた場合は専門家へ相談することをオススメいたします。社会保険労務士法人中込労務管理では、パワハラに強い専門家が対応させていただきます。

中込労務管理事務所編集部
執筆者情報 中込労務管理事務所編集部

人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。

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