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パワハラ防止法とは?2022年4月の法改正への対応方法

2021.11.08

山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。

今回は「パワハラ防止法」についてお役立ち情報をお伝えしていきます。

「パワハラ」という言葉が世の中になじみを持っている今日この頃ですが、「パワハラ」に関する法改正が施行予定なことをご存じでしょうか。

中小企業側としては今まで対策する必要はありませんでしたが、2022年4月より、「パワハラ防止法」という法律が施行されますので、企業はパワハラ防止法の内容をきちんと把握して準備しておく必要があるのです。

これは義務付けられているので、中小企業も対策せざるを得ないということです。本記事では、パワハラ防止法について企業側が準備すべきことや気を付けるべきことをわかりやすく整理いたしましたのでご確認ください。

 

パワハラ防止法とはどのようなものか?

パワハラ防止法という名前は聞いたことがあっても、その内容について詳しく知っている人は少ないかもしれません。ここでは、パワハラ防止法とはどのような法律なのかをご紹介します。

パワハラ防止法の概要

パワハラ防止法とは別名、改正労働施策総合推進法といい、良い職場環境を作るという前提のもとに施行されています。
対応が求められる内容は

⇒企業(事業主)によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発をする
⇒苦情などに対する相談体制の整備をすること
⇒被害を受けた労働者へのケアや再発防止などを徹底する

という法律です。

取り組みに応じて、企業は対応策の検討が必要です。

社会保険労務士法人中込労務管理では、企業の状況に応じてご提案をさせていただいておりますので、ご相談ください。

パワハラ防止法の施行日について

パワハラ防止法は2020年6月1日に施行され、同日より大企業ではすでに職場のパワーハラスメント防止対策を講じなければならないことが義務化されています。

中小企業は2022年4月1日から施行されることになっていますが、法律が施行されてから対応するのでは後手に回る可能性があります。中小企業の皆様も今から準備を進めることをオススメいたします。

 

対象となる企業

まず中小企業の定義は中小企業基本法では、以下の表のように定義されています。
ご自身の会社規模で当てはまっている部分をきちんと把握しておきましょう。
(中小企業庁HPより 中小企業庁:「中小企業・小規模企業者の定義」

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 ・資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社
または
・常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 ・資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社
又は
・常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 ・資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社
又は
・常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 ・資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社
又は
・常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

幅広く定義されていますので、ほとんどの中小企業でパワハラ防止法は当てはまると思っていてよいでしょう。

 

職場におけるパワーハラスメント具体的内容とは

パワーハラスメントの定義は、同じ職場で働く者に対して

①職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性をもって
②業務の適正な範囲を超えて
③精神的・肉体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

とされています。

厚生労働省では、判例や労働関係紛争処理事案に基づき、6類型を典型例としてパワーハラスメントを整理しておりますが、該当しなければハラスメントにならない、というわけではありません。

例えば、いじめを例に考えてみましょう。
いじめと一言で言ってもいろいろなパターンがあります。

・無視する
・知っていても黙っている
・身体的暴力をふるう
・ネットやSNSでの誹謗中傷をする
・悪口を言いふらす
・ものを隠す

など、具体的にはいろいろとありますが、どれか一つでも相手が「いじめを受けている」と思うといじめが起こっていることになります。

パワーハラスメントも同様に、該当しなければパワハラにならないというわけでもありません。それを踏まえた上で、6つの典型例を確認していきましょう。

 

パワーハラスメント行為、6つの典型例

「パワーハラスメントの6類型」として、具体的な行為を分類しています。
次の行為はパワハラとして判定される可能性が高いものです。事業主の方は特に注意が必要です。

1)身体的な攻撃
  暴行・傷害
2)精神的な攻撃
  脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
3)人間関係からの切り離し
  隔離・仲間外し・無視
4)過大な要求
  業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
5)過小な要求
  業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
6)個の侵害
  私的なことに過度に立ち入ること

パワハラの具体例はどんなものがあるのか

パワハラに該当するかどうか、ケースバイケースで判断するため一概には言えませんが、

注意をしていただきたいのは「パワハラの定義は一つとは限らない」ということです。例えば

『上司xは、職員の業務上の意見に対し、自分の意向と違う時は人前で罵り、怒鳴り続けていた。また、自分自身にミスがあると有無を言わさず部下に責任を転嫁することが多々ある。上司の言動が原因で体調を崩した部下が入院することとなった際にも、

「おまえの日ごろの健康管理が悪いから自己責任だ。そんなことで休むな」と怒鳴っていた』

このような状況の場合は、6つの典型例とされている

②……精神的な攻撃

④……過大な要求

少なくとも、この2つに当てはまる可能性があります。そのため、どの分類に該当することになるのか、パワハラと見られる行いがある場合はそれぞれ確認をしましょう。

 

パワハラ防止法に違反した際の罰則

パワハラ防止法では罰則は定義されていません。

そのため「法律で定めても実効性が薄い」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、パワハラ防止法以外で対応に追われることがありますので、解説いたします。

パワハラが発生すれば会社としての責任が問われることも

パワハラ防止法には罰則はありませんが、パワハラが発生してしまうと2つの観点から責任を問われる可能性があります。

企業名が公表される可能性

パワハラ防止法は、労働施策総合推進法の一部になりますが、この「労働施策総合推進法」の施行に関して、

厚生労働大臣は、事業主に対して助言・指導または勧告をすることができるとされています。

また、パワハラ防止法の定めに対して違反している事業主が勧告に従わない場合には、その旨が公表される可能性もありますので、注意が必要です。

訴訟に繋がる可能性

パワハラが社内で行われた場合、基本的には「被害者」が「加害者」に損害賠償を求めて民事訴訟となるケースがありますが、その際に「会社(=使用者)」に対しても行われることもあります。

会社は従業員に対して、

・職場環境配慮義務……従業員にとって働きやすい職場葬境を保つように配慮すべき義務を負う

・使用者責任……従業員が他人に損害を発生させた場合、その従業員が損害賠償の責任を負うだけでなく、会社もその従業員と連帯して被害者に対して損害賠償の責任を負う

上記のような義務・責任を負っているのです。

また、パワハラの加害者は、場合によっては、刑法の第204条(傷害)や第208条(暴行)といった形で処罰される可能性もあり、会社としても対応を求められることもあるでしょう。

罰則はなくともパワハラを見てみぬふりはできない

パワハラ防止策を講じているにも関わらず、パワハラが発生した場合と、規則や会社的な措置を何も取らなかった場合では大きく会社の信用度が変わります。

罰則がないからといって、パワハラ防止法への対応をしなければ、経営上大きなリスクに繋がることもありますので、

「法律だから守る」のではなく「従業員が安心して働ける」ために、労働環境の整備を進めましょう。

 

企業としてパワハラ対策を怠ることのリスクとは

パワハラ防止法に関する罰則について解説しましたが、企業としてパワハラ対策を怠った場合のリスクについても把握しておきましょう。

会社目線でどのようなリスクが生じるのか3つの観点で整理をしました。

 

想定リスク1:パワハラ防止法に対応しない場合

パワハラ防止法に関して、企業側で何も取り組まなかった場合や、

就業規則・社内規定を見直さずに放置していると、従業員から不満の声は上がります。

その結果、従業員が労働基準監督署に相談に行くと、監督官の調査・指導に繋がることもあります。

 

想定リスク2:刑事・金銭的な問題に繋がる場合

パワハラの被害者の方が、加害者だけでなく会社も訴えた場合、当然対応に追われることになります。

身体的・精神的苦痛に対する損害賠償請求にまで発展すると、パワハラ防止に尽力していない企業は責任問題に問われることも考えられます。

 

想定リスク3:信用面・人材面でのリスク

パワハラ対策が杜撰であると、直接的な訴訟以外にも影響があります。

近年、SNS上で企業の労働環境などは簡単に拡散されますので、会社側に問題がある場合は社会的信用は失うことになります。新たに求人を出し、採用活動をしても中々応募が来ないなど、間接的なリスクもあることは知っておきましょう。

 

知っておくべき裁判事例とは

パワハラ防止に向けて労働環境を整備しなければ、本人同士の問題にとどまらず、企業側にも悪影響を及ぼします。

過去に、社内でのパワハラがきっかけで企業側も責任を問われた事例を紹介いたします。

事例(1)「先輩によるいじめ」

【概要】
xx商事に勤務していたBは、先輩Cより休日の飲み会参加強要や、個人的な所用での使い走りをさせられていた。さらには「死ね」などSNSを通しても暴言などのいじめを受け、自殺してしまったケース。

【判決】
先輩Cには、Bに対するいじめを認定。CにBの遺族に対する損害を賠償する不法行為責任、さらに勤務先であるxx商事に対して、安全配慮義務の債務不履行責任を認める判決が下された。結果、先輩Cとxx商事に対して500万円ずつの損害賠償合計1000万円をの支払いを命じられた。

 

事例(2)「会社のパワハラに基づく損害賠償責任」

【概要】
A社の社員Bが、C部長より会議での厳しい叱責、失敗に対する金銭の要求、退職勧奨などのパワハラを受けていたことが判明し、3カ月の自宅療養を必要とする重度の抑うつ状態と診断された。

【判決】
C部長に対しては、民法709条による不法行為が認められた。また、A社に対しては民法715条による使用者責任が判決として認められ、連帯して慰謝料と弁護士費用全額の70万円の損害を賠償するよう命じられた。

 

もしも社内で実際にパワハラが起きたらどのように対応すればよいか?

パワハラは、会社側でルールを定めても発生する可能性は0にできません。万が一パワハラが起こってしまった場合は、次の3つのフローに従って慎重に対応を進めましょう

1……事実確認
2……調査を実施・加害者への処分を検討
3……処置方法について、パワハラ防止法などに沿って行う

パワハラをはじめとするハラスメント行為については、迅速かつ正確な情報を把握し
整理しながら内容によって専門家に調整してもらうなどの必要も出てきます。

社会保険労務士法人中込労務管理では、企業の状況をお聞きした上で適切なアドバイスをしておりますので、お気軽にご相談ください。

 

事実確認

本人からの相談及び周りからの通報などがあった際は、一次情報にできるだけ近づけるように

①状況確認

②情報の整理

を必ず行いましょう。人づてに聞いた情報のみでは、確実性に欠けていることもあります。

被害者・加害者だけでなく、第三者の同僚や目撃者などからもヒアリングをしておきましょう。

 

調査と処分の実施

事実関係の調査、結果に基づき、適切な処置を速やかに行います。

加害者への注意、異動や始末書、懲戒処分などの検討も行います。過剰な処分であると加害者が逆に“不当”として、申し立てる可能性もあるので、慎重な判断が大切です。
判断が難しい場合もありますので専門家への相談は随時行いましょう。

パワハラの事実を確認できなかったなどの場合でも、被害者に対しては丁寧な説明と理解をしてもらう必要があります。加害者側とされる従業員にも、今後、パワハラと誤解を生まないような教育・説明の必要が出てきます。

 

処置方法は慎重に

相談を受ける際や事実調査の際は、相談内容や調査内容に関する情報はプライバシーの保護のもと、行わなければなりません。個人情報や特定情報が漏れないよう、第三者の情報提供含めたサポート体制で調査と相談を行いましょう。

パワハラ防止法では、ハラスメント相談窓口の設置が義務付けられていますので、慎重に対応を進めましょう。

 

パワハラ防止法施行に向けて、企業が行うべき施策

パワハラ防止法の概要や、パワハラに関するリスクなどを解説いたしました。

最後に、パワハラ防止法施行に向けて中小企業経営者の皆様が対応すべき内容をお伝えいたします。

企業(事業主)の方針を明確化にすることと従業員への周知や啓発

企業の方針が決まっていなければパワハラ防止法をどう扱うかがわかりません。

事業主がパワハラについての方針を決め、従業員に周知をし、啓発する必要があります。社内掲示板や共有ファイルやメールなどできちんと残る形にしておくことが大事です。また、Eラーニングを社員に行うなど、パワハラに対する意識を高める行動も重要です。

具体的には社内規定にパワハラに対する事項を追加する、社内文書の中に残すことが大事です。社内で「パワハラを行ってはならない」という方針を就業規則などで規定することで従業員に周知・啓発すること、社内ホームページにパワハラ対策の方針を記載しておくことも会社としての方針を社会に発信している姿勢となります。

 

パワハラに関する体制整備

パワハラに関する相談や苦情が出た際に適切に対処する体制を整備しておかなくてはいけません。

パワハラの内容や発生原因などに関する研修・講習の実施をし、管理職などに毎月チェックをさせる、定期的な相談会を設けておくなども大切な体制整備となります。

また体制整備には専門家の力を借りることも大事なことです。

社内外に相談窓口を設置し、本格的な相談に適切に対応できるような仕組みを作っておきましょう。苦情窓口も設置することで、パワハラかどうかの適切な判断対応もできます。

社労士などと定期契約し、パワハラの相談や対応に協力してもらうほうがスピード感もあり、効率は良いでしょう。

 

 

早期の解決には社労士の活用をご検討ください

意外と奥が深いのがパワハラ防止法の内容です。

知らないと施行されてから慌ててしまうことになりますし、もしかしたら今すでにパワハラの種が育っているかもしれません。

今回解説しましたパワハラ防止法について、少しでも難しいと感じられた場合は専門家へ相談することをオススメいたします。

社会保険労務士法人中込労務管理では、パワハラに強い専門家が対応させていただきます。

 

中込労務管理事務所編集部
執筆者情報 中込労務管理事務所編集部

人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。

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