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【2023年4月~】出産に関する給付の改正内容を解説!企業としての関わり方も

2023.09.05 お知らせ・セミナー情報コラム

妊娠している女性のイラスト

山梨を中心に企業の労務管理を支える「社会保険労務士法人中込労務管理」です。今回は「出産に関する給付の改正」について解説します。

健康保険法などが改正され、2023年4月1日以降の出産について、出産育児一時金の金額が増額されました。社員に正しく案内できるよう、改正内容を理解しておきましょう。

本稿では、出産に関する給付の改正内容はもちろん、今さら聞けない制度の概要や出産の定義なども丁寧に解説します。出産育児一時金の申請方法や企業としての注意点もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

出産に関する給付の概要と改正内容

出産に関する給付には、「出産育児一時金」と「出産手当金」があります。このうち今回改正されたのは「出産育児一時金」です。

出産育児一時金とは、出産にかかわる費用として一定額が支給される制度のことです。出産には公的な医療保険が適用されないため、全額自己負担となりますが、出産育児一時金制度があることで出産の経済的な負担軽減につながっています。

本章ではまず、改正された内容や改正の背景について解説します。

2023年4月からどう変わった?

2023年4月1日以降の出産に対し出産育児一時金が増額され、以下のようになりました。

 

産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合

産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合

2023331日まで

202211日~)

42万円

40.8万円

202341日以降

50万円

48.8万円

産科医療補償制度とは、妊娠・分娩に異常がなかったにもかかわらず、出生した子どもが重度の脳性麻痺となった場合に補償を受けられる制度のことです。分娩を取り扱う医療機関のほぼすべてが加入しています。

そのため、出産に関する給付の改正とは「出産育児一時金の金額が42万円から50万円に増額されたこと」と捉えても問題ないでしょう。

出産育児一時金の金額は子どもの数によって決まります。双子や三つ子などの多胎出産の場合も同様なので、双子なら2倍の100万円、三つ子なら3倍の150万円となります。(産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合)

出産に関する給付が改正された背景

厚生労働省が実施した「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)」によると、出産費用は年間1%程度の割合で上昇していることがわかりました。地域差や施設差もありますが、公的病院における出産費用の平均値は45.2万円となっており、2023年3月31日までの出産育児一時金42万円ではまかないきれません。

そもそも出産育児一時金は、女性が出産に関する費用を心配せず、安心して出産できるようにという目的で創設された制度です。出産費用の現状と出産育児一時金の支給額が合わないのであれば、制度の趣旨に反してしまいます。

出産費用が年々上昇する状況にあっても、女性が安心して出産できるよう制度が改正されたのです。

健康保険における出産の定義を再確認

ここで、健康保険における出産の定義を再確認しておきましょう。

健康保険において出産とは、妊娠4か月以上、つまり妊娠85日以上の出産をさします。妊娠85日以上であれば、死産・流産・早産なども含まれます。

また、出産に関する給付は女性が安心して出産できることを目的としているため、胎児の父親が不明な場合や婚外子出産の場合も支給の対象です。

なお、「制度の詳細についてもっとくわしく知りたい」「社員の妊娠・出産に関する自社の取組みについて今のままでよいのだろうか?」などご不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめいたします。社会保険労務士法人中込労務管理では、経験豊富な専門家が丁寧に対応いたしますので、安心してご相談ください。

出産育児一時金を申請する方法

出産育児一時金を申請する方法には、以下の3つがあります。

・直接支払制度
・受取代理制度
・後日申請する方法

ひとつずつ見ていきましょう。

直接支払制度

近年、導入する医療機関が増えているのが「直接支払制度」です。3つある出産育児一時金申請方法のうち、出産した人の負担がもっとも少ないのがこの制度を利用する方法です。

直接支払制度では、出産育児一時金の金額(産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合50万円)を限度に、医療機関が出産費用を請求し受け取ります。出産した人による手続きは不要で、窓口での負担も抑えられます。

受取代理制度

「受取代理制度」は厚生労働省へ届け出ている一部の医療機関でのみ利用できる制度です。直接支払制度を導入していない、小さい規模の医療機関で利用できることが多いです。

この方法法は、直接支払制度と異なり、出産した人による請求手続きが必要になります。出産予定日の2か月前から申請可できるので、出産前に加入している健康保険(協会けんぽや健康保険組合など)宛に申請書を提出しておきましょう。

出産育児一時金の受け取りは、直接支払制度と同様、医療機関が行います。そのため受取代理制度を利用する場合も、出産した人による窓口負担は抑えられます。

後日申請する方法

出産育児一時金を申請する方法として、直接支払い制度・受取代理制度が一般的ですが、出産費用を一時的に全額自分で支払い、後日出産育児一時金を申請し受け取ることもできます。

出産費用をクレジットカードで支払いポイントを貯めたい場合などに、あえてこの方法を選択する人もいるようです。

実際の出産費用と出産育児一時金に差があった場合、どうなる?

出産育児一時金は一律で50万円(産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合)支給されます。ですが、出産費用が50万円ちょうどになることは少ないでしょう。

本章では、実際の出産費用と出産育児一時金に差があった場合の対応方法について解説します。

出産費用が出産育児一時金を上回る場合

まず、出産費用が出産育児一時金を上回る場合について見ていきましょう。たとえば、出産育児一時金が50万円であるのに対し、実際には55万円かかったといったケースです。

このような場合は、出産した人が差額を窓口で支払うことになります。例の場合だと、5万円を窓口で支払います。

出産費用が出産育児一時金を下回る場合

次に、出産費用が出産育児一時金を下回る場合についてです。たとえば、出産育児一時金が50万円であるのに対し、実際には45万円ですんだといったケースです。

この場合、加入している健康保険によって手続きが異なる場合があります。ここでは協会けんぽの場合について紹介しましょう。

協会けんぽの場合、以下の2種類の申請方法があります。
・「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」で申請する方法
・「健康保険出産育児一時金差額申請書」で申請する方法

それぞれ申請する時期と添付書類が異なり、以下のとおりです。

 

申請時期

添付書類

健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書

協会けんぽから支給決定通知書が届く前

必要

(医療機関から交付される直接支払制度に係る代理契約に関する文書の写し・出産費用の領収、明細書の写しなど)

健康保険出産育児一時金差額申請書

協会けんぽから支給決定通知書が届いた後

不要

申請後に審査が行われ、問題なければ差額が支給されます。

加入している健康保険が協会けんぽ以外の場合は、加入している健康保険組合のWebサイトなどで手続きを確認しておきましょう。

社員・元社員が出産!企業としての関わり方や注意点

社員の妊娠や出産にあたって、企業は様々な点に注意しなければなりません。産前産後休業や育児休業に関する手続きもそのひとつです。

産前産後休業や育児休業に関する保険給付を申請する際は、多くの書類が必要になります。人事担当者は、社員が産前産後休業に入る前に、必要な手続きを案内するようにしましょう。

また、退職した元社員であっても、以下の両方を満たすケースでは出産育児一時金の保険給付を受けられます。

・被保険者の資格が喪失する日の前日(退職日)までの被保険者期間が継続して1年以上
・出産日が被保険者の資格が喪失する日(退職日の翌日)から6か月以内

被保険者期間が継続して1年以上ある社員が、退職日の翌日から6か月以内に出産する予定である場合は、出産育児一時金を受け取れることを案内してあげましょう。

なお、上記の条件を満たす場合であっても、退職後に夫が加入している健康保険の被扶養者となった場合や、国民健康保険に加入した場合、出産育児一時金を二重に受け取ることはできません。この点についても案内しておくとよいでしょう。

【まとめ】出産に関する給付についてのご不明点は中込労務管理へご相談ください

出産に関する給付の改正については、とくに女性社員が多い企業の方はしっかりと理解しておく必要があります。妊娠・出産は突発的なことです。いざというときに困らないためにも、制度の基本的な内容も含めて確認しておきましょう。

とはいえ制度の理解が難しかったり、そこまで手が回らなかったりといったケースも多いのではないでしょうか。社会保険労務士法人中込労務管理では、企業のお悩みに応じて様々な角度からご提案させていただいております。お気軽にご相談ください。

中込労務管理事務所編集部
執筆者情報 中込労務管理事務所編集部

人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。

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