まさかの事態に備える車両管理規定、施行・就業規則の改正ポイントを解説
- 2021.12.23
山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人 労務管理PLUSです。
ときに、業務で使用する車について、就業規則や車両管理規定を別途作成し、従業員が業務中に車の利用をする際のルールを決めていますか?
昨今は交通事故に対する罰則が厳しくなり、業務中の運転であれば企業の責任追及も問われるようになりました。
従業員が業務で車を使用する場合、車両管理規定がない状態だと、事故を起こした際に混乱が生じます。
今回は、車両管理規定を施行する際、また、就業規則を改訂する際のポイントを解説します。
車両管理規定が必要な背景
営業時に車を使用する、配達で車を使用する。
従業員が業務中に車を使用する時は、管理者の目の届く状態にいないことが多いものです。
車を適切に使用すること、事故に関しての規定を就業規則などで定めておくことは、企業を守る手段になります。
その背景には、2つの法律の存在があります。
次に、どの法律がそれに該当するかを解説いたします。
民法715
この法律では、従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合に従業員のみでなく使用者も被害者に対する賠償責任を負うこととされています。
この法律が適応されるのは、社用車の運転中に起きた交通事故など。
しかし、車両管理規定を定めて、日頃から従業員に対して注意喚起していたと認められた場合は使用者に賠償責任が及ばないと判断されることもあります。
つまり、車両管理規定の存在が企業を守る手段になるというわけです。
道路交通法
もう一つは、道路交通法です。
道路交通法は、企業に対し、その社有車の運用について様々な規則を設けることを課している法律になります。
そして、注目すべきは罰則の厳しさ。規則を破った際の罰則が年々厳しくなってきているため、車両管理規定が元々作成されている場合でも、定期的に改訂する必要があります。
交通事故がもたらす企業への被害
さて、車両管理規定が必要な背景を解説したところで、交通事故が企業へもたらす被害にはどういったものがあるかをお伝えします。
・人的損失(従業員の離脱による労働力の損失等)
・物的損失(社有車の損壊による業務遂行の損失等)
・時間的損失(事故の対応による労働時間の増大等)
・経費の増大(事故の被害に対する賠償等)
・イメージダウン(企業への風評被害等)
これらのリスクを予防、軽減するためにも、車両管理規定で従業員に車使用の管理をさせることはとても重要になってきます。
対象となる車の種類とは
次に、企業が車両管理規定を設けた場合、対象となる車の種類をお伝えします。
対象となる車は下記のとおりです。
【対象となる車の一覧】
・企業が購入した車
・レンタカー
・私有車借上げ(マイカー)
・自転車
車両管理規定は上記の車両についての管理規定を設けなければなりません。
朝通勤で自転車を使用する従業員はどうなのか?様々な疑問があるかと思います。
自社の場合はどうなのか?詳しく確認されたい場合は中込労務管理へご相談ください。
車両管理規定を施行する際のポイント
車両管理規定を施行するためには、いくつかのポイントがありますので、解説します。
安全運転管理者の選任
安全運転管理者の選任は、道路交通法によって企業に課される規則の1つになります。(道路交通法第74条)。
①乗車定員が11人以上の車両を1台以上保有する企業
②定員数に関わらず車両を5台以上保有する企業
上記①、②いずれかに当てはまる企業は、安全運転管理者を選任することが義務付けられています。
また、車両を20台以上保有する企業は、20台ごとに副安全運転管理者を1人選任する必要があります。
運用ルールの規定
実際に車両を使用する際の運用ルール規定を決定します。
運用ルールを作る上では、
・車両の利用および許可基準
・車両利用の申請書の作成および承認基準
・保険の条件(保険の内容・種類など)
など、しっかりと決めておくことが重要です。
申請書の作成や、ルール規定を進める上で不明な点がありましたらぜひ中込労務管理へご相談ください。
当事務所では車両管理規程の作成についても支援しております。
車両台帳・運転者台帳の作成
使用状況について台帳を作成します。
ひとつは車両管理台帳、もうひとつは運転者台帳です。
車両管理台帳…社用車そのものを管理するためにある台帳。記載する内容としては以下の項目があげられます。
【記載項目】
・型式
・登録番号
・車名、車種(車両を特定する内容)
・車検や点検日等(車両の状況を把握する内容)
・保険に関すること
そして、運転者台帳とは、社有車の運転許可を得た運転者の情報を記載した台帳。
【記載項目】
・氏名
・部署名
・運転歴、事故・違反歴
・免許の更新時期等
どちらの書類も管理責任を果たしていることを主張するためにも重要な書類になります。
万が一の事故の際に、的確な管理をしていることを証明する書類になりますので、しっかり管理しておきましょう。
社用車の管理
万が一の事故を防ぐためには、日頃の車両整備・点検が重要になります。
定期的に車検・定期点検・日常点検をしっかり行い、記載しておくようにしましょう。
また、社有車の業務外使用禁止などのルールも整備しておくといいでしょう。
マイカーの業務運用について
マイカーは業務上か私用か区別がつきにくくなる、業務途中に事故でも企業に損害賠償責任が及ぶ可能性があるリスクがあります。
そのため、多くの企業は原則マイカー使用禁止しています。
やむを得ない場合は、別途マイカー通勤規定などを策定し、許可基準と届出を義務づけておくことをおすすめします。
懲戒処分となるルールの設定
交通事故で死亡事故などの重大な事故を起こしてしまった場合、従業員を懲戒処分として解雇をするケースも出てくるでしょう。
その場合でも就業規則に記載がない場合は解雇が無効になることもあります。
就業規則に事故を起こした場合の措置、懲戒処分に該当する場合のルール設定などを記載しておく必要があります。
事故が起きた場合の対策
厳重な管理体制をとっていたとしても、事故になる場合もあります。
事故発生時に最優先で企業がすべきことは、事故にあった従業員の安全確保。
正確な状況把握をし、事態を最小限の被害に留めることが重要です。
車両保険の加入
事故の被害を補填する手段として、車両保険があります。
予め加入しておくことで、保険でまかなえる可能性があります。
事故を未然に防ぐ対策
当然ながら、事故を起こさないことが何より大切なことです。
それを未然に防ぐのは、日頃の注意喚起、ルールの徹底が不可欠。
車両管理規定の周知(説明会の実施)
車両使用に関しては、規定があり、ルールがあることを従業員に周知することが何よりも大切になります。
説明会などを実施し、従業員に車両管理規定を理解してもらうことで、従業員自身が規定に則った運転を心掛けるようになります。
車両管理規定に違反した場合の措置
規定に違反した場合、罰則を設けるなどの措置を設けることも必要です。
これにより、規則を遵守する従業員が増え、車両管理規定の運用がスムーズになります。
まとめ:ルールの明確化が従業員の命、企業の責任を守ります
車両管理規定があることで、事故のリスク回避に大きな違いが出てきます。
最近では交通事故によるイメージダウンも企業にとっては大きな損失になり得ます。運用ルールを明確にし、従業員一人一人に意識させることで、従業員の命、しいては会社を守ることにも繋がります。
今回解説しました車両管理規定について、
・自社でどのようにルールを作ればよいのか?
・自社にあったルールの作成方法や内容を知りたい
といったご要望がありましたら、就業規則・車両管理規定に強い専門家がしっかりと対応をさせていただきますので、
社会保険労務士法人 労務管理PLUSまでお気軽にご相談ください。
人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。
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