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男女の賃金格差について開示が義務化!具体的な対策について解説

2022.10.02 お知らせ・セミナー情報コラム

山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。

2022年7月、男女の賃金格差について開示が義務化されたことをご存知でしょうか?

直近での法改正のため、まだ知らない、という企業も多いかもしれません。

義務化された以上、企業として何らかの対策をとらなければなりませんので、今回はその具体的な対策について解説をしていきたいと思います。

男女の賃金格差公表が義務づけられた対象企業

まず、男女の賃金格差について開示が義務化されたことについて、全ての企業が対象ではないことを先にお伝えしておきます。

対象となる企業は、従業員数301名以上となります。

後述しますが、男女の賃金格差について開示が義務化については女性活躍推進法が関わっており、そのため、従業員数301名以上の企業が公開対象となります。

しかし、女性活躍推進法でも、当初従業員数301名以上の企業が対象だったところが従業員数101名以上の企業へと範囲が広がってきていますので、男女の賃金格差について開示が義務化については従業員数101名以上の企業、また従業員数101名未満の企業もいずれは対象になる可能性があるといえます。

なぜ公表が義務化?その背景を解説

男女の賃金格差について開示が義務化されたことにおいて、その背景にあるのは「女性活躍推進法」の存在です。

女性活躍推進法とは、2015年8月、女性がその個性と能力を十分に発揮して仕事で活躍することを目的として制定されました。

女性活躍推進法では、従業員数101名の企業に以下の4点を義務付けており、男女の賃金格差についてはこの項目が増えたため義務化された、ということになります。

①自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析

②数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・周知・公表

③都道府県労働局への届け出

④自社の女性の活躍に関する情報の公表

女性従業員の賃金格差が起こる要因とは

男女雇用機会均等法以降、男女の垣根なく雇用が進められていますが、男女の賃金の格差についてはまだ課題が残っているのが現状です。

現在の日本では、男性の賃金を100とした場合、女性の賃金は77.5にとどまると言われています。

管理職や役員の女性登用が進まないことや、出産・子育てなどを転記に離職した女性が再度正社員として働きにくい、など女性が働くには障壁となる問題が多々あります。

そういった状況も踏まえ、賃金が高い職種に登用されない、キャリアの断絶が起こるなど、男性従業員と女性従業員の賃金格差が起こる要因はますます根深くなっていくと言えます。

具体的に公表する情報とは?

では、男女の賃金格差について開示が義務化されたことについて、具体的にどのような情報を公表するのかを見ていきましょう。

厚生労働省の2022年(令和4)年7月8日 女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせによれば、

以下のA~Cの3項目の情報を公表する必要があるとされています。

A:「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」の8項目から1項目選択

①採用した労働者に占める女性労働者の割合

②男女別の採用における競争倍率

③労働者に占める女性労働者の割合

④係長級にある者に占める女性労働者の割合

⑤管理職に占める女性労働者の割合

⑥役員に占める女性の割合

⑦男女別の職種または雇用形態の転換実績

⑧男女別の再雇用または中途採用の実績

B:男女の賃金の差異(必須)

C:「職業生活と家庭生活との両立」の7項目から1項目選択

①男女の平均継続勤務年数の差異

②10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合

③男女別の育児休業取得率

④労働者の一月当たりの平均残業時間

⑤雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間

⑥有給休暇取得率

⑦雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

具体的に、男女の賃金格差について開示が義務化されたことで公表する内容は、男女の賃金額そのものではなく、男性の賃金水準に対する女性の割合を開示し、その差を明確して開示するという方法をとります。

具体的な公表のための賃金格差の計算方法をお伝えすると下記のようになります。

賃金格差計算方法

①正規、非正規を問わず、雇用している従業員全員を男女別に直近事業年度の賃金総額を計算する

②賃金総額を従業員の総人数で割り、平均年間賃金を算出する

③①、②を実施した上で、女性従業員の平均年間賃金を男性従業員の平均年間賃金で割り、100をかけた(%)数値を男女賃金の差異として開示する

対象となる従業員は?

では、公表をするにあたり対象となる従業員とは、正社員だけなのでしょうか?

非正規社員も含めるのでしょうか?

正規、非正規問わず全従業員が対象、となります。

雇用契約によって公表する内容は変わるのか?

雇用契約によって公表する内容に変わりがあるのか、というのも当然の疑問になると思います。

結論は内容に変わりはありません。

全従業員が対象となります。

その他、心配な点があれば社会保険労務士法人中込労務管理では、企業の状況に応じてご提案をさせていただいておりますので、ご相談ください。

男女の賃金格差公表義務化された後に必要な対応とは

そもそも、男女の賃金格差について開示が義務化された背景には、女性従業員の賃金が上がりにくい構造を直していくという意図があります。

男女間での賃金格差の開示をすることで、企業が今後実施すべき制度の改善、現状の男女取り扱いの見直しをしていく必要があります。

次に、その具体的な対応について解説していきます。

男女間で差別的な扱いがないか見直す

まずは企業内で、男女間の賃金や昇給などについて、性別による差が発生していないかを確認する必要があります。

差別的な取扱いの例とは、下記のようなものを指します。

・男女別に賃金体系、賃金形態がある(男女別の賃金表、男性は月給制だが女性は日給制である等)

・男性にのみ住宅手当、家族手当など特別な手当が存在する

・職務、能率、技能等が同じであるのに、男性を優先的に昇給させており女性の昇級を遅らせていないか

例を挙げると、部長職は男性のみが就けるようになっている、外勤は男性、内勤は女性という区別が存在する、既婚社員のうち男性のみ賃金アップの対象とする、などがあります。

こういった男女格差はなくしていく必要があります。

育児・出産の制度を見直す

女性従業員の育児や出産に関する制度において、女性従業員の評価を下げ、後のキャリアの断絶につながるような評価制度になっていないかを確認しましょう。

差別的な評価制度の例とは、下記のようなものを指します。

・育休や産休明けに査定が下がるような評価制度になっている(育休・産休に入る前の実績で評価されない等)

例を挙げると、女性が産休・育休に入ったことでブランクの生じた期間を「実績がない」としてマイナスの評価をすること等です。

自己の能力や技能で挽回できない評価は女性従業員にとって不利であり、不適切な評価といえます。この場合は、産休・育休に入る前の実績で評価し、賞与や昇給に反映させる必要があります。

同様に、男性従業員であっても育休期間を「実績なし」と評価したり、低い評価をつけたりすることはあってはなりません。

人事評価の基準は公正であり、明確で透明性のある基準であることが適切です。

差別的な評価が存在する場合は改善していく必要があります。

ポジティブ・アクションの推進

賃金などの規定や評価制度に問題はない場合でも、女性の管理職が増えない場合や女性の職域が広がらない場合があります。

規定や制度以外での格差を解消するための企業ごとの自主的、積極的な必要な取り組みのことを「ポジティブ・アクション」と呼んでいます。

例を挙げると、下記のようなことが挙げられます。

・女性従業員に対して社内訓練・研修を積極的に行う

・女性従業員のうち、基準を満たしていれば意識的に配置、昇進させる

・「3年のうちに女性管理職を20%増やす」といった目標を掲げる

自社の場合は、どのような取り組みができるかわからないといった場合は専門家への相談もお勧めします。

まとめ:男女公平な制度の見直しで従業員からも評価される企業へ

男女の賃金格差について開示が義務化について解説いたしました。

男女間の賃金格差は根深い問題もありますが、地道な取り組みが変化となって現れます。

義務化されたから制度を見直す、というだけでなく、男女平等な職場の実現がされたら場合、従業員にとっても居心地のいい職場となっていくことでしょう。

従業員からも評価される企業となるべく、社会保険労務士法人中込労務管理でもサポートさせていただければと思いますので、ご希望の方はお気軽にお声がけください。

中込労務管理事務所編集部
執筆者情報 中込労務管理事務所編集部

人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。

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