2024年医師の働き方改革について(総論・まとめ)
- 2023.02.01 お知らせ・セミナー情報コラム
山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。
2024年4月1日からの医師の働き方改革について、各項目についてご紹介してきました。
まだ先の話のように見えますが、準備などを考えると時間はあっという間に過ぎていきます。
今回は、これまで紹介した医師の働き方改革についての総論をお伝えしていきますので、迫る期日までの心構えと準備に当てていただければと思います。
目次
そもそも、なぜ医師の働き方改革を行うのか?その目的は?
働き方改革とは、個々の事情に応じた多様な働き方を実現するためのもの。
その一環として、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の確実な取得などが義務化されています。
2024年4月1日からの医師の働き方改革においても、時間外労働の上限規制が行われます。
その目的として、長年問題視されてきた医師の長時間労働、医師不足の問題に目を向け、医師の健康の確保、医師の労働力の確保、ひいては医療提供体制の確保があげられます。
長時間労働になりがちな医師の職場環境に規制を設けることで、医師(医療従事者)や患者を守ることが今回の医師の働き方改革の目的となります。
2024年医師の働き方改革以降、最も重要なことは医師の労働時間の管理
医師の働き方改革で行われることは、
・時間外労働の上限規制
・追加的健康確保措置の実施
・医療機関勤務環境評価センターの設置 等です。
いずれも長時間労働を懸念している故の施行であることから、最も重要になってくるのは勤務医師の労働時間を管理すること。
一般企業であれば、労働基準法上の労働時間は1日8時間と決まっていますが、医師という職業の特性上、必ずしも時間内に終わるとは限りません。
さらに、医師には「当直勤務」という通常の労働時間外に通常の業務とは異なる業務を行う勤務形態が存在します。
こういった医師特有の勤務形態を含め、医師の労働時間を管理・把握することが肝要となります。
労務の管理に関してはプロである社会保険労務士にご相談いただくこともご検討ください。
もちろん、社会保険労務士法人中込労務管理でも対応しておりますのでお気軽にご相談ください。
関連記事:「宿日直許可を取得すべき理由や許可基準を社労士が解説」
働き方改革の猶予が切れる 2024 年 4 月 1 日までにすべきこと
それでは、次に医師の働き方改革の猶予が切れる2024年4月1日までにすべきことを具体的に上げていきたいと思います。
医師の在院時間の管理
前述したように、当直時間を含めて医師の在院時間を管理することが重要になります。
現状を正確に把握することで、対応や対策が取れるようになります。
タイムカードなどで管理している医療機関もあるかと思いますが、管理が複雑になるようなら、一般企業で利用されているような勤怠システムの導入も検討することもいいでしょう。
ただし、医療機関の場合は勤務体系が複雑なので、その医療機関に合ったシステムを見極める必要があります。
どのシステムが自分たちに向いているか、専門家の力を借りることも検討するといいでしょう。
複数の医療機関で勤務する医師の労働時間の把握も必須
副業、複業、兼業も一般的になりつつある昨今、医師の中には、複数の医療機関で勤務している医師もいるでしょう。
そういった場合でも、労働時間の把握は必要なのでしょうか?
答えはYESです。
その医師の労働時間を把握する必要があります。
その医師の「自院での労働時間」と医師からの自己申告等により把握した「副業・兼業先での労働時間」を通算した上で実施する義務(連携 B・B・C-1・C-2水準)又は努力義務(A 水準)とされます。
(それぞれの基準についてはこちらの記事で詳しく解説を行っています:「2024年開始の「医師の働き方改革」!肝となる医師の時間外労働制限の要点や準備しておくべきことを解説」)
医師の副業・兼業に関して届出制を取っている場合、また雇用している医師が副業・兼業を行っていることを把握している場合は、その医師の自己申告等により、労働時間数の見込みや実績について把握します。
また、許可制・届出制でない場合は本人からの自己申告を促し、その自己申告に基づき把握した、自院以外での労働時間を通算して管理します。
なぜ自院以外の労働時間も管理しなければならないのか、手間ではないのかと考える方もいるかもしれませんが、その理由として、複数の医療機関での労働時間を合算した時間外労働が基準を超過することができないため、自院以外で副業、兼業する医師の労働時間も把握しなければなりません。
超過してしまった場合、自院が対応することが増えるので、正しく自己申告させ、管理するようにしましょう。
36協定の自己点検
医師の働き方改革で忘れてはいけないことは、36協定の存在です。
勤務医師の労働時間を正確に把握していても、時間外労働をさせるためには制度を取り入れる必要があります。それが36協定です。
届け出はもちろんですが、手続きまでの自己点検も行うようにしましょう。
自己点検が難しいと感じた場合は、専門家と一緒に進めると漏れやミスがなく済みますのでお勧めです。
(36協定についての詳しい記事はこちら:「36協定はどう変わった?内容や届の変更点と企業が注意すべきこと」)
産業保健の仕組みの活用
医師の働き方改革の中に、長時間の時間外労働をした場合、医師の面談を行うことになっています。
その制度のために取り入れたいのが、産業保健の仕組みです。
産業医とは、職場環境において、健康で快適な環境の中で業務を行えるよう、医学的な専門的立場から助言・指導を行う医師のこと。
産業保健とは、産業医の考えに基づき労働環境や健康状態を整えていく制度。
医療にも詳しく、労務にも詳しい産業保険の制度を取り入れていくことで、今回の働き方改革にうまく対応していきましょう。
女性医師などの支援につなげる
働き方改革全体の取り組みとして、多様な働き方の実現があります。
多様な働き方とは、例えば、これまで育児出産に関わる場合、仕事を辞めざるを得ない環境だった女性も、時短勤務などを取り入れることによりワークライフバランスを維持しつつキャリア形成に臨むことができるようになる、というもの。
同じことが今まで育児出産で医師として従事していなかった女性医師にもいえ、時短勤務などで働く機会を持ってもらうことで労働力の確保ができるとともに、女性医師のキャリアを守る支援にも繋がります。
医師の労働時間の短縮の取り組み
前述した内容に加え、医師の労働時間を短くしていく取り組みも必要といえます。
例えば、下記のような取り組みをすることで労働時間の短縮につなげることができます。
・ 勤務時間外に緊急でない患者の病状説明等を行わない
・ 当直明けの勤務負担を緩和させる
・ 勤務間インターバルを設定する
・ 複数主治医制を導入する
医療機関全体で取り組んでいくことで、医師の労働時間を減らし、その分健康で長く働いてもらえる環境を作ることができます。
これらの対応について、積極的に議論し、導入を進める方向で検討してみることをお勧めします。
労務に関する問題は専門家とタッグを組んで乗り切りましょう
いかがでしたでしょうか?
いよいよ2024年4月に迫る医師の働き方改革についてのまとめをお話いたしました。
医師の健康を守ることは、ひいては患者さんのためでもあり、結果的に地域の医療を守ることにもつながります。
具体的な方法なども記述いたしましたので、ぜひご検討いただければと思います。
とはいえ、これまで長い期間続いてきた勤務体制を変更することは医師や医療機関にとって難しいと感じることも確かでしょう。
そんなときは労務の専門家である社会保険労務士へ相談することをお勧めします。
専門家とタッグを組んで、二人三脚で進んでいくことで安心を感じながら進んでいけるでしょう。
もちろん、社会保険労務士法人中込労務管理でも相談にのっておりますので、お気軽にご相談ください。
人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。
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