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運送業の2024年問題とは?物流企業への影響や対策法をわかりやすく解説

2023.04.26 お知らせ・セミナー情報コラム

荷物を運ぶ運送業の男性

山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。今回は「運送業の2024年問題」について解説します。

現在、人やモノの輸送にかかわる運送業は「2024年問題」に直面しています。2024年問題とは、働き方改革関連法の施行や改善基準告示の改正などによって、ドライバーの業務時間が制限されることで生じる諸問題の総称です。

本稿では、運送業における2024年問題の概要や、2024年問題の原因となる法令・制度の変更点などについて解説します。

運送業の中でも、2024年問題の影響を特に懸念されているのが物流業界です。そのため本稿では、特に物流業界で懸念されている影響についても具体的に紹介します。物流企業が2024年問題に対応するために必要な取り組みについても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

運送業の2024年問題とは「法令や制度の変更によって起こる諸問題」

運送業では2024年4月1日から、働き方改革関連法の施行に伴う「時間外労働時間の上限規制」が適用されます。

運送業以外の多くの業種では、2019年(中小企業では2020年)からスタートしている「時間外労働時間の上限規制」。運送業においては業務の特性から猶予期間がありましたが、2024年4月1日からいよいよ適用となります。

同じタイミングで、ドライバーの業務時間ルールを定めた「改善基準告示」が改正されます。またこれらの変更に先立って、2023年4月1日からは「割引賃金に関する規定」の変更もありました。

このように運送業のドライバーに関する規定変更が重なっており、それらによって様々な問題が生じると懸念されています。上記のような法令や制度の変更にともなって起こり得る問題を総称し「2024年問題」と呼んでいます。

2024年問題の原因となる3つの変更点

3を示す男性のイラスト

前述したように、2024年問題は法令や制度の変更によって生じます。ここからは法令や制度の変更点について具体的にみていきます。

2024年問題の原因となる変更点は以下の3点です。

1. 残業時間の上限規制が適用されること
2. 改善基準告示が改正されること
3. 時間外割増賃金率が引上げられたこと

ひとつずつ説明します。

1. 時間外労働時間の上限規制が適用される

働き方改革関連法の施行により、今まで上限のなかった時間外労働時間に、上限が設けられることになります。運送業において特別条項付き36協定を締結する場合、ドライバーの時間外労働時間は年間960時間までに制限されます。これは月平均80時間相当です。

他の業種では「月100時間未満・2〜6か⽉平均80時間以内」のように、上限値以外にも細かい規定が設けられています。しかしドライバー業務に関しては「年間960時間」という上限だけが設定されています。

ですので、たとえばある月の時間外労働時間が100時間であったとしても、年間で960時間以内であれば問題ありません。

なお、年間960時間を超えて時間外労働をさせた場合は「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という罰則がある点も押さえておきましょう。

2. 改善基準告示が改正される

改善基準告示の正式名称は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」。ドライバーの拘束時間や休息時間、運転時間などのルールをまとめたものです。

改善基準告示は、ドライバー業務の実態や課題に即して見直しが繰り返されています。2024年4月1日に改正されるのは、主に拘束時間や休息時間の部分です。細かい部分は、トラック・バス・タクシーなど業務内容によって異なります。

ここでは、2024年問題の不安が大きいトラックドライバーに関する主な変更点をお伝えします。

拘束時間(1か月・1年)

1か月:284 時間以内

1年:3,300 時間以内

※いずれも満たす必要がある

拘束時間(1日)

13 時間以内

※最大15時間まで・14時間超は週2回まで

休息期間

勤務終了後から継続 11 時間以上

※継続9時間を下回らない

運転時間

2日平均:19時間以内

2週間平均:144時間以内

連続運転時間

4時間以内

参考:厚生労働省「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」

トラックドライバーの改善基準告示の詳細や、バス・タクシーなどのドライバー向け改善基準告示については、厚生労働省のWebサイトから確認できます。

3. 時間外割増賃金率が引上げられた

2024年4月1日からの上記2つの変更に先立ち、2023年4月1日からは時間外割増賃金率が引き上げられました。

引上げの対象

中小企業において、月60時間を超える時間外労働をする場合

※大企業は変更なし

割増賃金率

50%

※変更前は25

月60時間以上の時間外労働が常態化している場合、従業員に支払う割増賃金が大幅に増加することは避けられません。人件費の面からも、ドライバーの労働時間を削減する必要があるのです。

【2024年問題】物流企業がこうむる具体的な影響

トラックと男性のイラスト

2024年問題は運送業全体で懸念されていますが、特に物流企業への影響は大きいと考えられています。物流企業がこうむる具体的な影響とは以下のようなことです。

・ドライバーが不足する
・売上・利益が減少する
・荷主に値上げ交渉をしなければならなくなる

いずれも企業経営にかかわる重要なことです。しっかりと頭に入れておきましょう。

ドライバーが不足する

労働時間を削減することはドライバーの収入に影響します。実際、2024年問題に対応してドライバーの労働時間を減らすと、今の給与を維持できないと考えている経営者は少なくありません。

そもそもドライバーの給与は、全産業からみても低めです。もともと低めの収入がさらに減少すれば、生活への影響を懸念し、離職を希望する人が増えるかもしれません。収入が落ち込むことで、離職者が増えたり就業希望者が減ったりすれば、深刻なドライバー不足に陥ってしまいます。

売上・利益が減少する

ドライバーの労働時間を減らすと、対応できる業務量が減少するため売上が落ちてしまいます。

一方、今のドライバー数のまま業務量を維持しようとすると、今までのような多くの時間外労働が必要です。しかし、月60時間以上の時間外労働には、50%の割増賃金が必要ですので、長時間の時間外労働常態化してしまうと、多くの割増賃金を支払わなければならなくなります。結果的に利益は減少してしまうでしょう。

荷主に値上げ交渉をしなければならなくなる

ドライバーの不足や売上・利益の減少は、物流企業の存続にかかわります。利益を出し事業を継続するためには、荷主に対して値上げ交渉をしなければならなくなるでしょう。

けれども、値上げをすんなりと受け入れてもらえるとは限りません。最悪の場合、値上げの提示をきっかけに取引が中止されるリスクも考えられます。

物流企業が2024年問題に対応するために必要な取り組み

運送業で働く人のイラスト

2024年問題に対応するために、企業にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。本稿では以下の3点を提案します。

・労働条件・職場環境を改善する
・ITツールを導入する
・取り組みを支援する助成金を活用する

それぞれみていきましょう。

労働条件・職場環境を改善する

2024年問題に対応するにはドライバーの確保が必要です。ドライバーを確保できれば、ひとり当たりの労働時間を減らしても、今までと同様の業務量に対応できます。

新たな人材を確保したり離職者を減らしたりするために、給与体系や休暇制度など、ドライバーの労働条件を見直してみましょう。

加えて、より良い職場環境を整備することも大切です。新たな人材として女性や高齢者なども念頭に置き、様々な人が働きやすい環境を整えましょう。具体的には以下のようなことが考えられます。

・女性用の休憩室・更衣室・トイレなどを完備する
・育児休業制度などを取り入れ、家庭と仕事を両立しやすい環境を整備する
・短時間でも対応可能な業務を創出したり、時短勤務を導入したりするなど、多様な働き方に対応する

労働条件や職場環境を整えることで、いろいろな属性の人が活躍しやすくなります。人材を確保したい場合は、労働条件や職場環境の改善に取り組んでみてください。

なお、労働条件を見直した際は、就業規則を修正する必要があります。就業規則の修正でお困りの際は、社会保険労務士法人中込労務管理にご相談ください。職場環境の整備に関するご相談もお受けしておりますので、あわせてご利用いただけますと幸いです。

ITツールを導入する

今までより少ない労働時間で今までと同様の業務量に対応するには、ITツールの活用がポイントになります。ITツールと、そのITツールによって期待できる効果の一例を以下にまとめました。

物流企業で活躍するITツール

ITツールによって期待できる主な効果

トラック予約受付システム

荷待ち時間の削減

配送計画システム

配車業務の効率化

車両管理システム

トラックの稼働率向上・管理者の業務負担軽減

コミュニケーションツール

打ち合わせや点呼の効率化

勤怠管理システム

ドライバーの労務管理の効率化

伝票電子化システム

ドライバーの業務負担軽減

現在、様々な業務にITを取り入れ、業務の効率化を図ろうとする動きが活発です。物流企業も業務のIT化を進め、ドライバーの負担軽減と業務の効率化に向けた取り組みをはじめましょう。

取り組みを支援する助成金を活用する

2024年問題に対応するための取り組みを行う際は、助成金を活用できることがあります。

ここでは「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース」を紹介します。運送業者がこの助成金を活用したい場合は、以下の項目を満たすことが必要です。

取り組み

・外部の専門家によるコンサルティングを受ける

・人材確保に向けた取り組みを行う

・労務管理用ツールを導入・更新するなど

成果目標

以下のいずれか

36協定における月の時間外・休日労働時間数の上限を「月60時間以下」で設定すること

・勤務間に9時間以上のインターバルを導入すること

参考:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)」

2024年問題に向けた取り組みを行う際に活用できる助成金は、上記の他にもあります。どの助成金を活用できるのかわからない場合は、助成金に詳しい社労士に相談してみると良いでしょう。

【まとめ】2024年問題の対策はお早めに!中込労務管理にご相談ください

本を開くスーツの男性

働き方改革関連法や改正改善基準告示の施行まで1年を切っています。変更点をしっかりと理解し、2024年問題に向けてどのような対策を講じるのかを十分に検討しましょう。

とはいえ運送業は課題が山積している状態であり、自社で解決していくのは難しいケースも多いと思われます。社会保険労務士法人中込労務管理では、働き方改革や助成金にくわしい専門家が対応させていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。

中込労務管理事務所編集部
執筆者情報 中込労務管理事務所編集部

人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。

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