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【2024年4月変更】労働条件の明示ルールとは?事前の準備が必須!

2024.03.05 コラム

労働条件明示ルール

山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人労務管理PLUSです。今回は、2024年4月からスタートする「労働条件の明示ルールの変更」について解説します。

労働条件の明示ルールが変更されることにともない、企業は準備をしなければなりません。まずは変更の内容を理解し、新ルールの適用までに自社には何が必要なのかを具体的に確認しておきましょう。

本稿が、労働条件の明示ルール変更で必要な準備をはじめる一助となりますと幸いです。

労働条件の明示とは

変更内容を理解する前提として「労働条件の明示とは何か」からおさらいします。

労働条件の明示とは、企業が労働基準法に則り、労働者に対して労働条件を通知する法的義務のことです。新たに雇用する労働者に対してだけでなく、有期契約の更新時にも書面で交付することが原則です。

書面には、必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」と、企業が定めている場合に記載が必要となる「相対的明示事項」を記載します。それぞれには以下の項目が含まれます

絶対的明示事項

相対的明示事項

雇用契約期間

就業場所と従事する業務

所定労働時間を超える労働の有無

就業時刻・休憩・休日

賃金(締切日・支払日・支払方法)

昇給

退職

退職手当(計算方法・支払方法・支払日)

臨時に支払われる賃金

負担させるべき用品

安全・衛生

職業訓練

災害補償・業務外の傷病扶助

表彰・制裁

休職

労働条件の明示には、労働者に対して明確な労働条件を伝えることで、後々のトラブルや誤解を防ぐ役割があります。正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員、派遣労働者などを含むすべての労働者に適用されます。

労働条件の明示ルール改正で追加される明示事項

労働契約の安全性と透明性を高めるために重要な役割を果たしている「労働条件の明示ルール」。このルールが2024年4月から変わります。

この変更は、労働者が自分の労働条件についてよりくわしく知れるようにするためのものです。自分の労働条件についてより深く理解できることで、将来の計画を立てやすくなるでしょうし、労働者の権利を守ることにもつながります。

ここからは、対象者別に改正の内容を解説していきます。

「全労働者」を対象とする明示事項:就業場所・業務の変更の範囲とは

改正により、「就業場所・業務の変更の範囲」について、原則書面で明示する必要が生じます。これは正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員、派遣労働者など、全労働者が対象であり、2024年4月1日以降に雇い入れや契約更新を行う労働者には明示が必須です。

「就業場所」「業務」「変更の範囲」の具体的な意味は以下の通りです。
・就業場所:労働者が通常就業することが想定されている場所のこと
・業務:労働者が通常従事することが想定されている業務
・変更の範囲:労働契約の期間中における変更の範囲(今後の見込みも含む)
つまり「就業場所・業務の変更の範囲」とは、現時点の就業場所および業務だけでなく、中長期的に変更の可能性がある就業場所および業務のことをいいます。

たとえば今後、就業場所の変更が想定される場合は、想定されるすべての就業場所を含めることが必要です。具体的には以下のように記載します。
・会社の定める営業所
・海外(アメリカ・シンガポール・韓国の3か国)および全国(東京・名古屋・大阪・広島・福岡)への配置転換あり
・会社の定める場所(テレワークを行う場所を含む)
このようにできる限り変更の範囲を明確にし、労使間の認識を共有できるとよいでしょう。

逆に、就業場所や業務の変更が想定されない場合は、その旨を明確に記載する必要があります。「東京本店」「ピッキング・商品補充業務」のように具体的に記載してもよいですし、「変更なし」「雇入れ直後の従事すべき業務と同じ」のような記載でも問題ありません。

ただし、出張や臨時的な業務など、就業場所や業務の一時的な変更については、明示の義務はありません。

「有期契約労働者」を対象とする明示事項とは

改正後、パートやアルバイト、契約社員のような有期契約労働者には、以下の事項を明示しなければならなくなります。

・更新上限の有無と内容
・無期転換申込機会
・無期転換後の労働条件

それぞれについて見ていきましょう。

有期契約の更新上限とは?上限の有無とその内容について

改正により、有期契約労働者に対し、雇い入れ時と契約更新時に、「更新上限の有無と内容」について原則書面で明示することが必要になります。「更新上限」とは、通算契約期間または更新回数の上限のことをいいます。

たとえば、「通算契約年数は3年まで」「契約更新は3回まで」のような更新上限がある場合は、その旨を書面に記載し、労働者に明示することが必要です。上限を設けていない場合も、その旨を記載しましょう。

加えて、更新上限を新たに設けようとする場合や更新上限を短縮しようとする場合には、事前にその理由を労働者に説明することが必要になります。

説明の方法としては、以下のようなものが認められます。
・【基本】文書を交付して、個々の労働者に面談などで説明する
・説明資料を交付する
・説明会を開催する
どのような方法を選ぶにせよ、労働者が正しく理解できることが大切です。

有期労働契約の更新時には、更新を望まない雇用主と更新を希望する労働者の間で、しばしばトラブルが生じます。今回の改正により、お互いの認識を合わせ、健全な労働環境を構築できるようになることが期待されます。

無期転換申込のタイミング(機会)

改正により、無期転換申込権が発生する有期契約労働者に対し、無期転換申込権が発生する契約更新時に、「無期転換申込機会」について原則書面で明示することが必要になります。

ここで「無期転換ルール」についておさらいしましょう。
無期転換ルールとは、労働者が同一企業と継続して有期労働契約を結び、その期間が合計で5年を超えた場合、労働者の要求により無期限の雇用契約に変更できる制度のことを指します。

なお「無期転換をする=正社員になる」ということではありません。有期労働契約の労働条件のまま、契約期間だけを無期にするということです。

中には無期転換申込権が発生しているもの、労働者が無期転換を行わないケースもあります。その場合、企業は契約更新のたびに無期転換の申込ができることを明示する必要があります。

無期転換ルール自体はこれまでと変わりません。しかし今までは、無期転換申込期間について企業から伝える義務はありませんでした。今後、無期転換申込期間について企業から伝えることで、無期転換申込権を行使する労働者が増えるかもしれません。無期転換後の労働条件に関しても変更があるので、次節で見ていきましょう。

無期転換後の労働条件

改正により、無期転換申込権が発生する有期契約労働者に対し、「無期転換後の労働条件」について原則書面で明示することが必要になります。明示するタイミングは、無期転換申込権が生じる契約更新時と、無期転換申込権の行使による無期労働契約の成立時です。

また明示する労働条件は、1章で説明した「労働契約締結の際の明示事項」と同じです。

無期転換後の労働条件は、原則、無期転換前と同一の労働条件が適用されます。労働条件を変更する場合は労働協約や就業規則などで「別段の定め」を設けることが必要です。なお、職務内容に変更がない状況で、無期転換後の労働条件を以前より悪化させることはやめましょう。

労働条件の明示ルール改正にともない企業がすべきこと

労働条件の明示ルール改正にともない企業がすべきことは以下の4つです。

・労働条件通知書を見直す
・有期契約労働者の更新上限を確認する
・無期転換申込権が発生する有期契約労働者がいるか確認する
・就業規則を見直す

それぞれ確認しておきましょう。

労働条件通知書を見直す

労働条件通知書とは、労働条件を明示する書面のことです。「雇用契約書」と兼ねることもできるため、「労働条件通知書兼雇用契約書」として交付しているケースもあるかもしれません。

今回の改正で労働条件の明示事項が追加されたため、労働条件通知書の内容も変更する必要があります。厚生労働省が公開しているひな型をダウンロードして活用するのもよいでしょう。
厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)

独自の労働条件通知書を使っていたり、ひな型をそのまま使うと不都合が生じたりする場合は、社労士などの専門家に相談しながら作成するのもおすすめです。

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有期契約労働者の更新上限を確認する

有期契約労働者を雇用している場合は、早めに有期契約労働者の契約更新回数と通算契約期間の上限を確認しておきましょう。

現在、契約の更新上限を設定していない企業の中には、今回の改正を機に更新上限を設ける場合もあるでしょう。あるいは、すでにある上限を見直して短縮することもあるかもしれません。このような変更を行う場合には、労働者に説明できるよう、変更の理由をまとめておくと安心です。

無期転換申込権が発生する有期契約労働者がいるか確認する

有期契約労働者を雇用している場合は、無期転換申込権が発生する有期契約労働者がいるかの確認も必要です。リストアップすると同時に、それぞれの無期転換権がいつ発生するかも明確にしておきましょう。

加えて、無期転換後の労働条件についても検討が求められます。書面で明示する必要があるため事前に準備しておきましょう。

就業規則を見直す

今回の改正を機に、就業規則を見直すのもよいでしょう。もちろん就業規則の見直しは必須ではありません。しかし、就業場所や業務を限定したり、更新上限を新たに設けたりするする場合は、就業規則を見直すことをおすすめします。

就業規則を整備することで、社内のルールが明らかになり、労使間のトラブルを防げるでしょう。また企業の透明性が増すことで、使用者と労働者の信頼関係にもよい影響があると思われます。4月に公開される新年度の助成金受給に向けた準備としても有効ですので、この機会に就業規則を見直してみてはいかがでしょうか。

労働条件通知書の見直しや有期契約労働者の更新上限、就業規則の見直しなどは社労士に一任できます。社会保険労務士法人労務管理PLUSにまずはお気軽にご相談ください。

労働条件の明示新ルールに違反した場合

企業は労働条件を明示する義務があり、違反すると最大30万円の罰金が科される可能性があります。罰金のリスクを避けるためにも、企業は適切に労働条件を明示してください。

明示義務の違反は労使間のトラブルに発展する可能性があります。適切な情報が提供されないことで信頼関係が損なわれることがあるので、十分に注意しましょう。

まとめ

2024年4月からの労働条件明示ルールの改正では、企業が労働者に対して明示すべき事項が追加されます。対象労働者や明示内容、明示のタイミングなどをあらためて確認しておきましょう。

今回解説しました「労働条件の明示ルールの改正」について、少しでも難しいと感じられた場合は専門家へ相談することをおすすめします。社会保険労務士法人労務管理PLUSでは、ご相談に応じてその分野に強みを持つ専門家が対応いたします。お気軽にご連絡ください。

中込労務管理事務所編集部
執筆者情報 中込労務管理事務所編集部

人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。

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