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賞与とは?ボーナスの種類や仕組み、社会保険料の計算方法を解説!

2024.08.26 お知らせ・セミナー情報コラム

東京・山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人 労務管理PLUS(旧:中込労務管理)です。今回は、賞与について解説します。

賞与は、支給の義務がないからこそ、それぞれの企業のカラーが出やすいもの。賞与の概要を知ることで、賞与のあり方を見直すきっかけにしてみてください。社会保険料の取り扱いや、労働者の権利、企業側が行うべき手続きなどについても確認しておきましょう。

賞与とは何か?

まずは、賞与とは何か、一般的な定義や概念、給与との違いについて解説します。

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賞与の一般的な定義と概念

賞与とは、一般に「ボーナス」とも言われる、通常の給与とは別に企業が従業員に支払う追加の給与のことです。賞与は主に、従業員の業務成績、企業の業績、または特定の時期の経済的ニーズに応じて支給されるものであり、労働者のモチベーション向上や生活支援、功労を称える目的で行われます。

日本においては、多くの企業が夏と冬の年二回、決まった時期に賞与を支給することが一般的ですが、支給の義務が法律で定められているわけではありません。したがって、賞与の支給は企業の裁量によるところが大きいのが特徴です。

賞与と給与との違い

賞与と給与の主な違いは、その支給の定期性と計算基準にあります。給与は労働提供の対価として、定期的に(通常は月ごとに)支払われる固定的な金額です。これに対して賞与は、通常、年に数回のみ支給される非定期的な給付であり、支給額も業績や個人の貢献度に応じて変動することが一般的です。

また、給与が生活の基本的な資金源としての機能を持つのに対し、賞与は特別な努力や成果、会社への貢献に対する報酬としての性格を強く持っています。これにより、賞与は従業員にとって追加の収入源となり、特定の生活需要(例えば年末年始や子どもの学校の始まりなど)に対応する手助けとなるのです。

賞与の法的基礎

ここでは、賞与が日本の労働法体系の中でどのように位置づけられているかを詳しく解説します。賞与の法的基盤は、契約や慣行、就業規則に依存するため、企業と労働者の間で共有された理解と期待が非常に重要です。

労働基準法における賞与の位置づけ

労働基準法において、賞与は法律で明確に定められた支給義務があるわけではありません。しかし、賞与は多くの企業において従業員への重要な報酬形態として位置づけられており、労働者の権利として扱われることがあります。

労働基準法では、賞与が契約や就業規則、慣行によって定められている場合、その規定に基づいて適切に支給されるべきであるとされています。したがって、企業が賞与を支給すると決定した場合、就業規則にその内容を記載し、公平かつ透明性を持って運用する必要があります。

賞与支給の法的義務と権利

日本の法体系の中で賞与を支給する法的義務は直接的には存在しません、しかし、一度支給を開始した賞与は労使間の契約や慣行と見なされ、企業はそれを一方的に変更することが困難です。賞与が就業規則に記載されている場合、その規則を変更しない限り企業は支給を続けなければならない場合がほとんどと考えておきましょう。

また、賞与の支給は従業員の権利として認識されており、賞与の不払いや支払い遅延は労働者からの法的措置を引き起こす可能性も。賞与の支給を受ける権利は、特定の労働慣行や過去の支給実績に基づき、労働契約の一部と見なされることもあります。

「同一労働同一賃金」と賞与

「同一労働同一賃金」の原則は、同じ価値の労働に対して同等の報酬を支払うという考え方です。この原則に基づくと、正社員と非正規雇用者間での賞与の取り扱いにおいても、公平性が求められます。

具体的には、同じ職務内容と責任を持つ従業員には、雇用形態に関係なく同様の賞与が支給されるべきです。ただし、実際には企業によって賞与の算定基準や支給体系が異なるため、この原則が完全に適用されるわけではありません。非正規雇用者が同じ仕事をしていても、賞与の額が異なる場合があり、これが労働市場における不平等感を生じさせる要因となっています。この問題に対処するため、企業は賞与の支給基準を明確にし、全ての従業員が平等に評価されるよう努める必要があります。

賞与の種類と目的

賞与は従業員への報酬形態として多様な目的を持ち、企業によってその支給方法や計算基準が異なります。主に、基本給連動型、業績連動型、決算賞与の三つのカテゴリーに分けられます。それぞれの種類と目的、効果について詳しく見ていきましょう。

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①基本給連動型賞与とは

基本給連動型賞与は、「基本給の数か月分」という形で計算されることが一般的です。このタイプの賞与は、従業員の安定した収入を保障し、企業への忠誠心や職場での安定を促進する目的があります。支給の基準は通常、勤続年数や基本給の額に基づくため、長期間にわたって企業に貢献している従業員に対する報酬として機能するのです。また、この賞与は比較的予測可能であり、従業員が経済的な計画を立てやすくなるというメリットがあります。

②業績連動型賞与とは

業績連動型賞与は、個人または企業全体の業績に基づいて支給額が変動する賞与です。このタイプの賞与は、従業員に高い業績を達成するための追加のモチベーションを与えます。個々の目標達成度合いや部門・企業全体の成果に応じて賞与が増減し、従業員は自身の貢献が直接的な報酬に反映されることを実感できる形態です。ただし、経済状況の変動や業績不振が賞与額に直接影響を与えるため、従業員が受け取る賞与額の不確実性が高まる可能性もあります。

③決算賞与とは

決算賞与は、企業の財務年度の業績が確定した後に、特定の時期に支給される賞与です。このタイプの賞与は、主に企業の利益に直結し、特に良好な業績を上げた年には従業員への追加報酬として機能します。決算賞与は、従業員に企業の成功への貢献を促すと共に、企業と従業員の利益を共有する手段として働きます。これにより、従業員は自分たちの労働が会社の業績向上にどのように貢献しているかをより実感しやすくなります。

各種賞与の目的と効果

各種賞与は、それぞれ異なる目的と効果を持っています。

基本給連動型賞与は従業員の生活の安定と忠誠心向上を。業績連動型賞与は、従業員の成果と努力を直接報酬することでモチベーションを高める効果があり、個々人の能力発揮や自己向上を促します。一方、決算賞与は企業全体の業績が反映されるため、全社員が一丸となって目標達成に努める意識を高める効果があります。これにより、組織全体としての連帯感や協力が強化されることが期待されるでしょう。

各種賞与の設計と実施においては、企業文化や戦略、従業員の期待とニーズを考慮することが重要です。例えば、革新的なアイデアやリスクを取る行動を奨励する企業文化の場合は、業績連動型賞与が特に有効であり、従業員の創造性と主体性を促すことができます。一方で、安定した業績を維持することが求められる企業では、基本給連動型賞与が従業員に安心感を提供し、長期的なキャリア構築を支援することにつながります。

賞与の適切な管理と透明なコミュニケーションによって、従業員は自身の仕事の価値を認識し、より一層の努力を促されます。賞与制度はただの給付ではなく、企業が従業員に対して投資する一環として機能し、その投資が結果的に企業の成長や発展につながることが理想的です。賞与の種類を選定し、その目的と効果を明確に定義することは、企業戦略の成功を左右する重要な要素となります。

企業における賞与の実際

賞与制度は、企業が従業員に対する感謝の意を示し、モチベーションを向上させるための重要な手段です。ここでは賞与の計算方法、査定期間、支給タイミング、そして賞与の対象者について詳しく見ていきます。

賞与の計算方法と支給基準

賞与の計算方法は、上記の基本給連動型、業績連動型、決算賞与によって異なります。基本給連動型では、「基本給の何か月分」という形で計算され、勤続年数や従業員の等級に応じて支給額が決定されます。業績連動型では、個人または部門、企業全体の業績評価に基づき、目標達成度に応じて賞与額が変動します。決算賞与は、企業の財務成績が良好な場合に、特定の時期に一定額または比率で支給されるのが一般的です。

企業によっては、これらの方法を組み合わせた複合型の賞与計算方式を採用することもあります。支給基準は、企業の内部規定や就業規則に明確に記載され、従業員が予測可能な形で賞与を期待できるようにすることが望ましいです。

査定期間と支給タイミング

賞与の査定期間は、通常、賞与支給の前の数か月間にわたり設定されます。夏の賞与では前年の後半から当年の初めまで、冬の賞与では当年の前半が評価されることが一般的です。この期間中の業績や行動が評価の対象となります。

支給タイミングは企業によって異なるものの、多くの日本企業では夏(6月または7月)と冬(12月)の年2回が標準です。ただし、業績が特に良い年には決算後に特別賞与を支給することもあります。

賞与の対象者

賞与の対象者は、基本的には正社員が中心ですが、企業のポリシーによっては非正規雇用者やパートタイムの従業員も対象となる場合があります。ただし、非正規雇用者に対する賞与は、その雇用形態や勤務条件により異なり、正社員と同等の賞与が支給されることは稀なケースです。

中途採用者については、入社時の契約や就業規則に基づき、勤務期間に応じた日割り計算で賞与が支給される場合が多いでしょう。また、退職予定者は賞与の支給日に在籍しているかどうかによって、支給の可否が決まることが一般的です。これは、賞与が労働の対価としての性格を持つため、在籍の実績が重要となるからです。特に、賞与の支給日に在籍していない場合、企業はその支給義務を負わないことが多いです。この点は企業の賞与規定や就業規則に明確に記載されている必要があります。

賞与の支給に関しては、企業は透明性と公平性を保つために、賞与の計算方法、支給基準、査定期間、支給タイミング、そして対象者についての情報を従業員に対して明確に開示することが求められます。これにより、従業員は自身の報酬がどのように決定されているかを理解し、企業への信頼と満足度の向上につながります。

企業にとって賞与は、従業員の努力と貢献を認識し、評価するための有効な手段です。適切に管理され、公平に実施される賞与制度は、従業員の士気を高めるだけでなく、企業文化を強化し、組織全体の生産性向上にも寄与します。

社会保険料の取り扱い

賞与も、社会保険料徴収の対象です。ここでは、賞与の取扱いや、近年改正された社会保険法の影響などについてみていきましょう。

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賞与と社会保険料(健康保険・厚生年金保険の取り扱い)

賞与の支給に伴い、健康保険料と厚生年金保険料が徴収されます。これらの保険料は、賞与額に基づいて計算され、賞与が支給される際に従業員の賞与から直接控除されます。

賞与から徴収される保険料は、通常の月給から徴収されるものとは別に計算され、その額は賞与の金額に比例します。健康保険料と厚生年金保険料は、賞与額に一定の率を乗じて算出され、その負担は従業員と雇用者が折半で担います。

この制度は、従業員が一時的な高額収入を得た場合でも、その収入に対応した保障を受けられるようにするためのものです。

改正された社会保険法の影響

近年の社会保険法の改正は、賞与とその保険料の取り扱いにも影響を及ぼしています。改正法では、賞与の支給額が増加した場合に適用される保険料率の変更や、計算方法の見直しが行われました。これにより、賞与から差し引かれる保険料の額が変動し、企業と従業員双方に影響を与える場合があります。特に大きな賞与を支給する企業では、保険料の増加が企業負担の増大を招くことがあるので、経営戦略においてもこの点を考慮する必要があるでしょう。

賞与からの控除(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料)

賞与からの控除は、健康保険料と厚生年金保険料に限らず、雇用保険料や介護保険料も含まれます。介護保険料は、40歳以上65歳未満の従業員に適用されるもので、これも賞与からの控除対象です。賞与支給時にこれらの社会保険料は計算され、賞与の金額から自動的に差し引かれるため、従業員は手取り額として控除後の金額を受け取ります。

保険料の計算には、「標準賞与額」が使用され、賞与額から千円未満を切り捨てた額を基準にして算出されます。保険料の具体的な率は、健康保険法や厚生年金保険法、雇用保険法に基づいて定められ、各保険機関によって設定されるものです。例えば、健康保険料は地域によって異なる率が適用され、厚生年金保険料は一定のパーセンテージで計算されます。

それぞれのケースに応じて、会社側は対応策の検討が必要です。社会保険労務士法人 労務管理PLUS(旧:中込労務管理)では、企業の状況に応じてご提案をさせていただいておりますので、お気軽にご相談ください。

賞与の変動と企業の姿勢

賞与は、給与のように一定額の支給が定められていないため、さまざまな理由で額が変動することがあります。賞与額を変動させる場合の注意点を解説しますので、参考にしてみてください。

経済状況と業績の変動が賞与に与える影響

賞与の支給額やその頻度は、経済状況や業績の変動に大きく依存します。経済が好調で企業業績が上昇している時期は、より多額の賞与が支給されることが一般的です。逆に、経済が不調で業績が低迷している時は、賞与の額を減額するか、場合によっては支給を見送る決定がなされることもあります。このような決定は、短期的な財務状況のみならず、長期的な企業の安定性と持続可能性を確保するために重要です。

賞与不支給・減額時の法的対応と企業の姿勢

賞与の不支給や減額を行う際には、法的な側面と企業の姿勢が重要になります。賞与が法的に保障された給付ではないため、企業は経済的な理由で賞与を減額または不支給にすることが可能ですが、このような変更を行う場合には、従業員とのコミュニケーションが極めて重要です。企業は、賞与の変更がなぜ必要なのか、どのように決定されたのかを透明にすることで、従業員の理解と信頼を維持する努力をしなければなりません。また、就業規則に賞与に関する明確な規定がある場合、その規定に従って行動することが求められます。

労働者の権利と企業の義務

ここでは、労働者の権利と、企業側の義務について解説していきます。賞与を減額する際に起こりうる、労働者と企業の交渉例も紹介しているので、確認しておきましょう。

賞与の請求権と労使慣行

賞与は法律によって保証されているわけではありませんが、企業の労使慣行や就業規則、個々の雇用契約に基づいて従業員が請求できる権利が存在することがあります。賞与が長期にわたって一貫して支給されてきた場合、それが「労使慣行」と認められることがあります。この慣行が確立している場合、企業は特別な理由なくこの慣行を変更することは困難です。変更を行うには、従業員との十分なコミュニケーションと合意形成が必要とされます。

企業が直面する問題と解決策

企業は経済状況の変動、業績の不振などにより賞与の支給を減額または中止する決定を迫られることがあります。このような場合、従業員の不満が高まり、労働紛争に発展するリスクがあります。解決策としては、透明性を持って従業員に状況を説明し、可能な限り早期に対話を開始することが重要です。また、賞与の支給基準を明確にし、業績連動型の賞与制度への移行を検討することも一つの方法です。これにより、従業員が企業業績と個人の報酬の関連を理解しやすくなります。

労働者と企業の間の交渉例

賞与に関する労使間の交渉は、しばしば雇用条件の改善や労働環境の一部として行われます。例えば、ある企業では業績が好調なにも関わらず賞与が減額された場合、労働組合が交渉の場を設け、賞与制度の透明性と公正性の向上を求めた事例も。また、企業が経済的に困難な状況にある場合には、一時的な賞与の削減に対して、将来的な補償やその他の福利厚生の改善を交換条件とする交渉が行われることもあります。

これらの交渉は、双方にとって公平で納得のいく解決を目指すものであり、労働者の権利を尊重しつつも、企業の持続可能性を確保することが求められます。労使が対話を通じてお互いの立場を理解し、柔軟に対応することが、賞与に関わる多くの課題を解決する鍵となります。

手続きと報告

賞与の支給に際しては、企業はいくつかの重要な手続きを遵守する必要があります。企業が行わなければならない手続きについて解説しますので、参考にしてください。

賞与支給に伴う手続き

企業は、賞与を受け取る従業員に対して、賞与明細書を発行する必要があります。この明細書には、支給額の詳細、控除される税金や社会保険料などの詳細を記載します。明細書があることで、従業員は自身が受け取る賞与の構成要素を正確に理解することができるのです。

また、賞与支払いが完了した後には、被保険者賞与支払届を社会保険事務所に提出が必要です。これは、従業員の賞与に基づく社会保険料の計算に影響を与えるため、正確な記録とタイムリーな提出が求められます。この届出により、社会保険の適切な管理が保証され、従業員の保険権利が正しく反映されます。

賞与不支給報告書の重要性と手続き

賞与が支給されない場合、企業は賞与不支給報告書を作成し、提出する必要があります。この報告書は、企業が社会保険料の計算において賞与を支給しなかったことを正式に記録するもので、企業が賞与支給月に賞与を支給しなかった場合に提出されます。この手続きは、従業員の社会保険料が過剰に計算されることを防ぐために重要です。

賞与不支給報告書の適切な提出により、企業は法令遵守を実現し、従業員の保険権利が正確に管理されることを保証します。また、この報告は企業が透明性を保ち、従業員に対して公正な情報提供を行っていることを示すものでもあります。

賞与に関するご相談は社会保険労務士まで

 

今回解説した「賞与」について、少しでも難しいと感じられた場合には、専門家へ相談することをおすすめします。
当法人でも無料でご相談を受け付けていますので、お困りの方はぜひ一度お問い合わせください。
(オンライン面談対応可能)

 

中込労務管理事務所編集部
執筆者情報 中込労務管理事務所編集部

人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。

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