中小企業も例外ではない!同一労働同一賃金で変わる待遇・規定徹底解説
- 2021.11.30
山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。
今回は、「同一労働同一賃金」について解説いたします。
2020年4月から施行され、2021年4月には中小企業も対象となりました。
施行から1-2年が経過しましたが、まだ未対応という企業もいらっしゃるのではないでしょうか?
弊社でも「対応しなくてはいけないと思うが、具体的にどうすればいいのかのわからずに、対応がとまってしまっている」と相談をいただく場合がございます。
「同一労働同一賃金」の制度を進める上で
・難しいという印象がある
・自社で対応は必要ない
と思っている場合であっても、対応方法によっては従業員のモチベーション向上に繋がりますので、しっかりと整備して自社の強みにしていきましょう。
目次
同一労働同一賃金とは?
そもそも「同一労働同一賃金」とはなんでしょうか?
正規雇用の従業員と非正規雇用の従業員(有期雇用、パートタイム、派遣)との間に不合理な待遇差があった場合、これを解消することをいいます。
同じ事務仕事をしているにも関わらず、
・正社員のAさん……給与20万円・賞与あり
・パートタイムのBさん……給与15万円・賞与なし
のように、雇用形態の違いだけで給与をはじめとする待遇に差がある場合には注意が必要です。
同じ仕事であれば、給与や評価は同一にすべきであり、不合理を解消する必要があるという考え方が「同一労働同一賃金」になります。
海外でもすでに導入されている制度となり、EUでは、フルタイムの従業員とパートタイムの従業員が同じ業務をしているのであれば、1時間あたり同じ賃金を支払う「均等待遇」が義務付けられています。
施行の背景
どのような雇用形態を選択しても、納得のいく待遇を受けることができ、多様性のある働き方を選択できるために施行されました。
様々なサービス、業種が誕生する昨今、労働者においても多様な働き方が増えています。
将来的な労働人口の減少に備え、同じ仕事をしている人であれば、同じ報酬・評価をし、正規雇用・非正規雇用に偏らない働き方を目指して作られています。
法改正のポイント
同一労働同一賃金の改定ポイントは、下記3点になります。
・不合理な格差の禁止
・待遇に関する説明義務の強化
・行政による助言・指導、裁判外紛争解決手続の整備
詳しくは後述しますが、規定の改訂や体制を整備する必要があるということを押さえておきましょう。
同一労働同一賃金のメリット・デメリット
待遇格差をなくすために制定された「同一労働同一賃金」、海外ではすでに運用開始され、成功例も多いといいます。
しかし、海外では正規雇用が8割を超えるのに対し、日本では6割に満たないという現状もあります。
これまでの体制を変えるということは、当然メリットもあればデメリットも生じます。
次に、同一労働同一賃金のメリット・デメリットをお伝えします。
同一労働同一賃金のメリット
・非正規雇用の従業員のモチベーションUP
・優秀な人材確保に繋がる
そもそもの目的が、正規雇用と非正規雇用の従業員格差を解消なので、非正規従業員にとってみれば正当な評価、正当な待遇を得られるチャンスとなるといえます。
待遇改善は仕事へのモチベーションUPに繋がりやすくなります。
ひいては非正規雇用でも優秀な人材確保しやすいというメリットが生まれます。
同一労働同一賃金のデメリット
・人件費の増加
・制度の見直しなど雑務が発生
正規雇用と非正規雇用の間に「不合理な待遇格差」があるのあれば、給与・賞与、その他の待遇について改善しなければいけません。
この場合、人件費の増加が見込まれますので、経営に影響を及ぼします。
また、同一労働同一賃金は、社内調査から規定の見直し・改善といった対応が求められますので、社内業務量は増える結果になりそうです。
同一労働同一賃金、どう対応する?
導入が始まったとはいえ、同一労働同一賃金についてはまだ未実施の企業も多いのが現状のようです。
現状の洗い出しをし、待遇差の有無を見つけること。
待遇差がある場合はその説明ができるようになること。
上記2点を実施する必要があります。
企業の対応すべきこと
次に、実際に企業が対応する取り組みについて具体的に記載していきます。
どの待遇が不合理になるかは、その企業の規定の内容によります。
社会保険労務士法人中込労務管理では、企業の状況に応じてご提案をさせていただいておりますので、お気軽にご相談ください。
規定による不合理な待遇差を点検、整備
まずは社内の正規雇用・非正規雇用の待遇について、「実態」や「社内規定」をもとに整理して確認していきましょう。
・給与の一例:一定の営業成績を残した従業員に基本給のUPをしているが、非正規の従業員に対しては基本給のUPがない
・賞与の一例:一定の営業成績を残した従業員に賞与の支給をしているが、非正規の従業員に対しては支給がない
・手当の一例:通勤手当は正規の従業員のみに支給し、非正規の従業員には支給しない
上記の例でいくと、雇用形態の違いで給与、賞与、各種手当などの支給がされないことは「不合理」ということになります。
待遇差の説明義務
同一労働同一賃金の導入により、非正規雇用の従業員は、待遇差の内容、理由について事業主に説明を求めることができるようになりました。
事業主は、非正規雇従業員から説明を求められた場合は対応しなければいけません。
行政ADR規定の整備
行政ADRとは、事業主と従業員との間に紛争が起きた場合、裁判をせずに解決する手続きのことを言います。
これまでは有期雇用や派遣などの非正規雇用については法整備がされていませんでしたが、今回から整備されることになっています。
「均衡待遇」、「待遇差の内容・理由に関する説明」についても行政ADRの対象となります。
そのため、従業員の方から行政に相談しやすくなると考えられますので、企業側も備えておく必要があります。
対応不十分な場合の罰則の有無は?
同一労働同一賃金の導入にあたり、違反した場合でも罰則は設けられていません。
とはいえ、不合理な待遇をそのままにしておくと、従業員の離職に繋がったり、果てには訴訟になるリスクも秘めています。
同一労働同一賃金、導入ガイドライン
同一労働同一賃金は、うまく活用すれば非正規の従業員のモチベーションUPに繋がります。
従業員に仕事へのやりがいを持ってもらいことで、定着率をあげる効果も期待できますので、積極的に対応していきましょう。
現状の確認
同一労働同一賃金の対応をスムーズに進めるためには、現状把握が重要になります。
手順としては下記のとおりです。
1. 非正規の方(パートタイム・有期雇用・派遣労働者)を雇用しているのか
2. 正規社員と比べて待遇差があるか
3. 待遇差がある場合、「不合理な待遇差」になっていないか
このように進めていくことをオススメいたします。
待遇の整備
不合理な待遇差が存在する場合、待遇差を埋める整備を行います。
例えば、基本給のように同じ基準でも成果や能力により違いが生じるのは問題ありません。
基準自体に違いがある場合も、合理的な理由が存在すれば認められます。
しかし、通勤手当を非正規雇用だから支給しない、といった理由であれば「不合理な待遇」となります。
不合理な待遇差があれば、解消しなければいけません。
正規雇用と非正規雇用の間にどのような違いがあるのか確認する際、比較表を作成するとわかりやすくなります。
規定化・説明の実施
不合理な待遇差を解消するためには、社内規定を変更する、新たに規定を作成する必要があります。
そしてそれを従業員に説明し、納得してもらうとより同一労働同一賃金の効果が現れてきます。
具体的には、就業規則の作成および見直しを行うこと。
その後、従業員説明会の実施をするとより理解が深まるでしょう。
同一労働同一賃金対応に向けた当事務所のサポートについて
今回解説しました同一労働同一賃金について、企業にとっては「自社の待遇のどの部分が不合理になるのか」、など判断基準に困る要素も見受けられます。
少しでも難しいと感じられた場合は、専門家へ相談することをオススメいたします。
社会保険労務士法人中込労務管理では、同一労働同一賃金の対策に強い専門家が対応させていただきますので、お気軽にお声がけください。
人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。
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