社労士とは?業務や相場、依頼方法などを徹底解説|活用事例も参考に
- 2023.03.03 お知らせ・セミナー情報コラム
山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。今回は私たちが有する「社労士」という資格について解説します。
全国社会保険労務士会連合会の調査によると、「社労士」という資格の認知度は96.7%。その一方で、業務について理解しているのは59.8%にとどまっており、資格の認知度のわりにあまり理解されていないことがわかります。
そこで本稿では、社労士についての理解を深めていただきたく、社労士とはどのような資格で何ができるのかを詳しく解説します。この記事を読めば、どのようなときに社労士を活用できるのかがわかりますので、ぜひ参考にしてください。
目次
社労士は「人事と労務管理のプロ」
社労士の正式名称は「社会保険労務士」。社会保険労務士法に基づいた国家資格を有する人のことで、人事や労務管理についての専門家です。労働や社会保険に関する幅広い法律知識を活用し、企業の成長をサポートします。
社労士の業務内容は多岐にわたる!具体的には?
社労士の業務は、以下のようにわけられます。
・1号業務:法令に基づく書類作成・提出代行
・2号業務:法令に基づく帳簿書類の作成
・3号業務:社会保険や労務管理に関するコンサルティング
このうち1号業務と2号業務は、社労士以外の人が仕事としてその業務を行ってはならない「独占業務」です。ひとつずつみていきましょう。
【1号業務】法令に基づく書類作成・提出代行
1号業務の内容を紹介します。1号業務に関連する「助成金」についても解説します。
1号業務にあたる具体的な業務内容
1号業務とは「法令に基づく書類作成と提出代行」のことです。具体的には以下のような業務が該当します。
・労働保険・社会保険の年度更新手続き
・労働保険・社会保険資格の取得・喪失手続き
・社会保険料の算定基礎届の作成・提出
・労災保険の申請・給付の手続き
・死傷病や出産にかかる申請・給付の手続き
・各種助成金の申請にかかる手続き
社労士しか申請の代行ができない「助成金」がある
1号業務に該当する「各種助成金の申請にかかる手続き」の「助成金」についてもう少し掘り下げて解説しましょう。
助成金には複数の種類がありますが、中には社労士しか申請の代行ができないものがあります。それは「雇用環境の整備関係等の助成金」「人材開発関係の助成金」のように、厚生労働省が支給している助成金です。
ちなみに助成金には、厚生労働省以外の国や地方自治体が提供するものもあります。このような助成金は社労士でなくても申請の代行が可能です。
【2号業務】法令に基づく帳簿書類の作成
2号業務とは「法令に基づく帳簿書類の作成」のことです。2号業務に関連する帳簿書類には、以下のようなものがあります。
・労働者名簿
・賃金台帳
・出勤簿
・労働契約書
・災害補償に関する書類
・労使協定
・就業規則
このような帳簿書類は、企業を運営する際に欠かせない重要なものです。たとえば、「労働者名簿・賃金台帳・出勤簿」は、従業員を雇用している企業が必ず作成・保管しなければなりませんし、労働契約書や災害補償に関する書類など2号業務で関与する多くの書類は、労働基準法第109条により保管が義務付けられています。
労使間の約束事を書面にした「労使協定」や常時10人以上を使用する企業に作成が義務付けられている「就業規則」に関しては、記載内容や手続きが細かく決まっており複雑なため、社労士に依頼する人も多いです。
【3号業務】社会保険や労務管理に関するコンサルティング
3号業務の具体的な内容と労務監査について詳しく解説します。
3号業務にあたる具体的な業務内容
3号業務には「社会保険や労務管理に関するコンサルティング」が該当します。1号業務・2号業務とは異なり、社労士の独占業務ではありません。
社労士は、専門知識を活かし、人事・労務管理に関するあらゆる相談に応じることができます。その相談範囲は多岐にわたりますが、一例としては以下のとおりです。
・労務監査
・働き方改革への対応
・離職率の高さ
・労使間のトラブル
労働に関する法令はたびたび改正されます。最近だと働き方改革に関連する様々な制度変更がありました。これら一つひとつに対応するには、法令や制度の変更内容をしっかりと理解することが必要です。
しかし本業と平行して行うのは難しく、本業に専念できなくなってしまうこともあるでしょう。法令や制度の変更にすぐ対応するのも社労士の業務です。最新の情報提供や対応策の提案で、企業の労務環境をサポートします。
また、採用や定着、ハラスメントなど人に関する悩みは企業にとって避けられない問題です。そのような悩みに対して社会保険労務士法人中込労務管理では、顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、問題を未然に防ぐ予防型の改善提案も積極的に行います。ぜひお気軽にご相談ください。
労務監査
3号業務に該当する「労務監査」では、労務環境が法律に則った状態かどうかを社労士がチェックします。
企業が従業員の労働環境を把握できておらず、実は時間外労働が基準を超えていた、年次有給休暇の取得ができていなかったなど、労務関連のリスクが常態化しているケースも少なくありません。中には、労働基準監督署の定期監督で指摘されてはじめて気がついたというケースもあるようです。
社労士による労務監査は、労務関連のトラブル回避に役立つでしょう。
社労士に依頼する4つのメリット
社労士に依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか。本稿では以下の4つを紹介します。
・従業員との間に起こり得るトラブルを未然に防げる
・ 複雑な事務作業・手続きから解放され、本業に専念できる
・ 自社に適切な助成金を正しく利用できる
・ 人材の定着率が上がる
従業員との間に起こり得るトラブルを未然に防げる
社労士に依頼するメリットの1つが「労使間トラブルの防止に役立つこと」です。従業員とのトラブルを防ぐには、法令を遵守した労働環境を整えることが大切です。社労士は労働環境の整備に関する専門知識をもっているので、トラブルが起きる前に適切な対策を提案できます。
たとえば、社労士に労務監査を依頼した企業で、労働時間を適切に把握できていないことが判明したとします。その段階で、労働時間を正確に把握できる仕組みを整えておけば、従業員から労働時間について相談を受けた場合でも、大きなトラブルになることなく解決できるでしょう。
労務関連のトラブルは、企業の信頼やイメージを大きく傷つけてしまいます。トラブルが起きる前に社労士に相談しておくと安心です。
複雑な事務作業・手続きから解放され、本業に専念できる
社労士に依頼するメリットには「複雑な事務作業などから解放される」ことも挙げられます。
企業を運営するうえで避けて通れないのが事務作業です。従業員が増えれば管理する書類も増えますので、負担も大きくなります。そのうえ、記載事項に変更があったり手続きが複雑だったりすることも多く、自社で書類を作成し申請するのは大変なことでしょう。膨大な事務作業に追われ、本業に専念できないこともあるかもしれません。
社労士は、書類の作成や申請などの専門知識があるため、スピーディかつ正確に業務を遂行できます。事務作業を社労士に依頼することで、自社のリソースがあき、その分本業に専念できるでしょう。
自社に適切な助成金を正しく利用できる
社労士に依頼するメリットとして「自社に合う助成金を利用できること」も忘れてはいけません。
助成金には多くの種類があり、利用条件も様々です。自社が利用できる助成金はどれなのかを検討するだけでもひと苦労でしょう。そのうえ、助成金の利用には申請が必要です。助成金について詳しくない状態で、申請書類を用意したり提出したりするのもかなりのリソースを要することでしょう。
社労士は助成金に関する最新情報にも精通しています。自社の悩みを相談すれば、利用できる助成金について提案してくれます。加えて、書類作成や申請も依頼できるので、助成金に関する業務を一任することも可能です。
人材の定着率が上がる
「人材の定着率アップ」も社労士に依頼する大きなメリットです。
人材が定着する環境には、法令遵守と働きやすさが欠かせません。法令遵守に関しては、どの企業も同じルールに従うことになるため判断しやすいです。
一方、働きやすさは企業や人によって異なるため、その企業の内情に合う制度を整える必要があります。
新たに制度を整えるには、法令や制度に関する専門知識が必要です。社労士はそのどちらも有しているため、制度整備のサポート役として役立ちます。社労士を活用して従業員にとって働きやすい環境を整えることができれば、人材の定着率アップも期待できるでしょう。
社労士への依頼をおすすめするシーン
「社労士に依頼するメリットはわかったけれど、今の自社に社労士が必要なのだろうか」と迷っている人もいるかもしれません。
本稿でおすすめする社労士への依頼シーンは以下の3つです。
・従業員が増えたとき
・事業拡大・職場改善などをするとき
・事務作業の負担を軽減したいとき
それぞれ理由もあわせてお伝えします。
従業員が増えたとき
社労士への依頼をおすすめするシーンの1つめが「従業員が増えたとき」です。従業員が増えると労使間トラブルが多くなります。
従業員が少なく、経営者の考えや理念を密に共有できていたときには、多少労働条件に難があった場合でも、経営者に協力的な従業員が多いものです。しかし従業員が増えてくると、労働条件や労働環境に対する見方が厳しくなり、トラブルになってしまうリスクが高まります。従業員が増えてきたシーンで、労働契約書などを見直し、現状に合う内容に変更しておくとよいでしょう。
特に常時10人以上を使用する企業においては、就業規則の作成が義務付けられています。目安として従業員が10人になった段階で、就業規則の作成を社労士に依頼してみてはいかがでしょうか。
事業拡大・職場改善などをするとき
社労士への依頼をおすすめするシーンの2つめが「事業の拡大や職場の改善などをするとき」です。事業の拡大や職場の改善には資金が必要です。自社が利用できる助成金を社労士から提案してもらえれば、資金面の不安解消につながるでしょう。
助成金に関する相談は無料で行っていることも多いです。また、社労士に支払う費用も「支給された助成金の〇%」と成功報酬で設定していることが大半です。現段階で資金にゆとりがない場合でも、安心して相談できるでしょう。
事務作業の負担を軽減したいとき
社労士への依頼をおすすめするシーンの3つめが「事務作業の負担を軽減したいとき」です。企業の規模が大きくなると事務作業の負担も増えます。最初のうちは従業員だけで対応できるでしょうが、規模が大きくなればなるほどその量も膨大になります。
もちろん自社で事務専門の従業員を雇用するのもひとつの方法です。しかし、ひとりの従業員にすべての負担がかかってしまうのはおすすめできませんし、採用コストがかかってしまうこともあるでしょう。
場合によっては、事務作業が多い時期にだけ社労士に依頼するという方法も可能です。自社の状況に合わせて依頼方法を検討してみるとよいでしょう。社労士への依頼パターンについては次章で解説します。
社労士への依頼パターンと費用相場
社労士への依頼方法には、「単発での依頼」と「継続的な依頼」の2パターンがあります。ここからは、それぞれのおすすめポイントや費用相場についてみていきましょう。
なお費用については、依頼の範囲や使用するシステムによっても異なります。あくまで参考としてご覧ください。
必要に応じて「単発」で依頼する
単発での依頼とは、必要なときに必要な業務だけを依頼することです。全国社会保険労務士会連合会の調査によると、顧問契約をしていない企業の約半数が単発で依頼しているようす。単発での依頼が多いのは、助成金の申請や就業規則の作成といった業務です。
単発の場合、業務によって費用が決まっています。ニーズが高い、助成金の申請や就業規則の作成の費用相場は以下のとおりです。
依頼する業務 |
費用相場 |
助成金の申請 |
着手金0円(必要な場合もある) 報酬金:助成金の15~25% |
就業規則の作成 |
5万~20万円 |
「顧問契約」を結び継続的に依頼する
継続的な依頼の場合は、顧問契約を結ぶことになります。顧問契約を結ぶと、事務作業からコンサルティング業務まで、広範囲の業務を依頼できます。
特に、労働環境や制度の整備は単発での対応が難しいものです。単発依頼で一時的に解決できたとしても、根本的な改善ができていなければ、再度トラブルが起きてしまうこともあるでしょう。
たとえば「トラブルが多い問題社員の処遇」について考えてみてください。継続的に支援できるのであれば、問題行為に対するマニュアルを定めたり、社員研修を開催したりといった改善策を提案できます。それがうまくいかなかったとしても、新たに策を練ることも可能です。単発で依頼する場合は、問題社員を辞めさせるかどうか、どのように辞めさせたらよいかなどに目が行きがちです。しかし、それだけでは根本的な解決になりません。
継続的に企業を支援することで、単に法令を遵守するだけでなく、企業の将来性を考えたサポートが可能になるのです。
顧問契約の費用は、従業員数に応じて月額の費用が決まっています。以下に費用の相場をまとめました。
従業員数 |
月額 |
5~9人 |
5,000円~ |
10~19人 |
1万円~ |
20~29人 |
2万円~ |
30~49人 |
4万円~ |
50人~ |
5万円~ |
社労士法人中 込労務管理がサポートさせていただいたお客様の声
ここで、社会保険労務士法人中込労務管理が現在までにサポートさせていただいた事例を紹介します。
【事例1】従業員数8名の歯科クリニック様
こちらのお客様は「歯科治療に集中したい」という理由で、開業時から人事・労務に関する業務を当法人に依頼され、それ以来顧問契約を結びご支援しています。
当初「スタッフのために産休や育休の制度を整えたい」と考えておられたものの、「具体的な方法がわからない」とお困りでした。そこで基本的な内容からお伝えし、無事制度を整えることができました。
「スタッフに幸せになってもらうことが企業の成長につながる」というお考えをおもちの院長は、社労士を活用して、スタッフが幸せに働ける環境を作られています。
【事例2】従業員数約160名、車の部品製造業者様
こちらのお客様は、従業員が増えて雇用形態が多様化してきたこと、事務作業が増えてきたことの2つがきっかけとなり、当法人と顧問契約を結ぶことになりました。
当法人と顧問契約を結んだメリットを尋ねたところ、以下の3点を挙げられています。
・労働問題への対応に自信がもてるようになった
・事務作業の工数をカットできている
・広い範囲でフォローしてもらえる
中でも、事務作業の工数カットは予想以上だったとのお声をいただいています。
より詳しい声や実際に利用されている方のインタビュー動画はこちらから
【事例3】従業員数1,000名超の小売業者様
こちらのお客様は、ドラッグストアやレストラン、健康増進施設などを幅広く経営されており、従業員の数も1,000名を超える大きな規模の企業様です。
従業員数が1,000名を超えたことで、今までにはなかった様々な相談が増えたそうです。多くの相談に法律に則って適切に対応するために社労士の必要性を感じられ、顧問契約を結ぶことになりました。
当法人と顧問契約を結んだメリットを尋ねたところ、以下の3点をあげられています。
・風通しのよい労働環境を作れ、離職率が減った
・自社に合う情報・アドバイスがもらえる
・将来を見越した提案がもらえる
長期にわたってお付き合いが続く顧問契約だからこそのメリットを、多く感じていただいているようです。
より詳しい声や実際に利用されている方のインタビュー動画はこちらから
社労士に依頼する際に知っておくべき3つの注意点
社労士に依頼する際には知っておくべきことがあります。依頼後に残念な思いをしないためにも、以下の3点に気を付けてください。
・依頼する業務を明確化する
・費用を検討する
・無資格者に依頼しない
それぞれみていきましょう。
依頼する業務を明確化する
社労士に依頼する前に、どのような業務を依頼したいのかを明確にしておきましょう。そうすることで、依頼後のミスマッチを防げます。
業務を明確化していないと、依頼時に対応業務の確認がおろそかになりやすいもの。依頼後に、自社がお願いしたい業務が契約内容に入っていなかったとなると、追加費用が必要になる場合もあります。
どの業務を依頼したいのかを明確にすることで、このようなミスマッチを防げるでしょう。
費用を検討する
社労士に依頼する際は、費用についても理解し納得する必要があります。費用やその仕組みは、社労士事務所によって様々です。あらかじめ相談し、十分に納得したうえで依頼するようにしましょう。
自社で対応する場合と社労士に依頼する場合の費用を算出し、比較検討してみるのもよいでしょう。また、業務をすべてお願いすると予算を超えてしまう場合は、依頼する業務範囲を狭めたり単発で依頼したりすることも検討してみてください。
無資格者に依頼しない
社労士が行う多くの業務は独占業務となっています。独占業務とは、いくら知識があっても、社労士の資格をもっていない人が仕事として行ってはならない業務です。
コンサルティング業務を依頼している先で書類作成もお願いしたが、実は社労士ではなかったというケースもあるようです。
無資格者に依頼すると思わぬトラブルに巻き込まれるリスクがあります。「当然資格をもっているだろう」とあいまいにせず、事前に資格を有しているかどうか確認しておくと安心です。
企業の健全な成長のために社労士の専門知識をご活用ください
社労士は、企業の成長に欠かせない「人材」に関する専門家です。社労士がもつ専門知識を活用することで、労使間トラブルの防止や人材の定着率アップなど、企業にとって様々なメリットがあります。
人材を大切にし活用することは、企業が成長するうえで重要です。一方で、企業が一人ひとりの従業員を適切に支援することは非常に大変です。人事や労務管理にお困りの方は、人材のプロである社労士に依頼してみてはいかがでしょうか。
社会保険労務士法人中込労務管理は、企業の内情に合わせた幅広い支援を行っています。お悩みやお困りごとがある方はお気軽にご相談ください。
人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。
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