助成金・補助金の違いを6つの観点から解説!令和5年度、助成金最新情報も
- 2023.04.03 お知らせ・セミナー情報コラム
山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。今回は「助成金と補助金との違い」について解説します。
助成金や補助金は、事業を展開・継続する上で重要な制度であり、ぜひとも有効に活用したいものです。事業経営に役立つ助成金や補助金ですが、これらの違いを理解できているでしょうか?
本稿では、助成金と補助金との違いや、それらを利用する際に知っておくべき注意点について解説します。記事後半では、令和5年度の助成金情報もお伝えしますので、ぜひご覧ください。
目次
助成金と補助金で異なる6つのポイント
助成金と補助金には、以下のような共通点があります。
・国や地方自治体から支給される
・返済義務がない
・後払いで支給される
一方で、異なる点も存在します。以下の一覧表をご覧ください。
|
助成金 |
補助金 |
管轄・財源 |
厚生労働省・労働保険料 |
経済産業省・法人税 |
目的 |
雇用の安定 |
企業への投資 |
受給のしやすさ |
要件を満たしていれば受給できる |
受給できないこともある(受給できる確率:10~50%程度) |
公募時期 |
4月・5月からが多い |
通年であることが多い |
受給までの流れ |
採択の必要はない |
採択される必要がある |
申請できる人 |
社労士・自社 |
自社 |
助成金と補助金との相違点について、ここからくわしく解説していきます。
1. 管轄と財源
助成金と補助金の本質的な違いは、管轄と財源にあります。助成金は厚生労働省が管轄しており、主に人を対象とした支援を行うものです。企業が支払っている労働保険料が財源となっています。
一方、補助金は経済産業省が管轄する、主にモノに対する支援制度で、法人税を財源として支給されます。
2. 目的
助成金と補助金は制度自体の目的にも違いがみられます。助成金は、従業員の給与をアップさせたり、待遇を改善し人材を定着させたりなど、雇用の安定が目的です。
一方、補助金の目的は企業への投資です。特定産業の育成や地方創生のほか、新規事業の立ち上げや設備投資などを行う企業の支援など、さまざまな目的で支給されます。
3. 受給のしやすさ
助成金と補助金は受給のしやすさも異なります。助成金は、要件を満たしていれば原則受給することが可能です。
一方、補助金を受給するには、要件を満たした上で採択される必要があります。申請した事業者の中からコンペ方式で採択される事業者が決まるため、人気がある補助金の場合、受給できる確率が下がってしまいます。
種類にもよりますが、補助金を受給できる確率は10~50%程度です。申請をしても受け取れない場合がある点は頭に入れておく必要があるでしょう。
4. 公募時期
助成金と補助金は公募される時期も異なります。助成金は通年で申請できるものが多いのに対し、補助金は年度明けから募集されるものが多くみられます。
とはいえこれは一般的な傾向です。それぞれの制度によって異なる場合がありますので、申請する場合は事前にしっかりと確認しておく必要があります。
5. 受給までの流れ
助成金と補助金はいずれも、「助成金・補助金の支給要件に即した事業計画の申請」と「実行した事業の報告」という2段階の手続きが必要です。助成金・補助金を受給するまでの具体的な流れは以下のとおりです。
1. 受給したい助成金・補助金を見つける
2. 支給要件に即した事業計画を申請する
3. 【補助金の場合】採択される
4. 事業計画を実行する
5. 実行した事業の内容・経費などを報告する
6. 助成金・補助金が支給される
おおまかな流れは共通しているのですが、補助金の場合は受給までに「採択」という段階があり、この点で助成金と異なっています。
6. 申請できる人
助成金と補助金はどちらも自社で申請することが可能です。しかし自社で対応するのが難しく、外部に依頼したいと考えるケースもあるでしょう。そのような場合に注意したいのが、助成金と補助金では申請できる人が異なるということです。
助成金の場合、社労士がすべての手続きを代行できます。書類の提出や労働局からの問い合わせなど、あらゆる手続きを一任することが可能です。
一方、補助金の場合は自社で申請する必要があります。中小企業診断士や行政書士、税理士など専門知識を有する人に依頼したくても、申請を代行することは認められていません。認められているのは申請のサポートのみとなっていますので、注意しましょう。
助成金を申請する際の注意点
ここまで解説してきたように、助成金と補助金は異なる特徴をもつため、申請の際に注意すべき点も異なります。まずは助成金を申請する際の注意点からお伝えします。
助成金を申請する際の注意点は以下の3点です。
・人気の助成金は早めに終了することがある
・制度の変更が頻繁である
・積極的に提案・申請できる社労士が限られている
それぞれみていきましょう。
人気の助成金は早めに終了することがある
先ほど、一般的に助成金は公募期間が長めであるとお伝えしました。しかし希望する事業者が多く、助成金の予算の上限に達してしまうと、予定よりも早めに終了することがあります。申請を検討している場合は早めに対応しましょう。
制度の変更が頻繁である
助成金は年度ごとに発表されますが、その時点で受給要件や受給額などの変更が行われることも多くみられます。たとえば令和5年度の場合、申請の際に今まで必要だった生産性要件が撤廃され、新たに賃上げ要件が追加されるなどの変更があります。助成金は制度の変更が頻繁に起きるため、申請時に最新の情報を確認することが大切です。
毎年最新情報を確認しそれに沿った申請書類を作成するのは、事業者にとって大きな負担となることも多いでしょう。社労士は助成金の代理申請ができる唯一の専門資格ですので、お近くの社労士に相談することも検討していきましょう。
積極的に提案・申請できる社労士が限られている
一説によると、助成金を積極的に提案・申請できる社労士は、社労士全体の10分の1程度ともいわれています。
理由のひとつに、助成金の申請代行はスポット的な業務だからということが挙げられます。多くの社労士は給与計算や手続き業務、労務相談のような業務をメインとしているため、スポット的に発生する助成金の申請に対して割ける人員・時間が限られ、提案をしたくてもできないというケースが想定されます。
加えて、助成金の申請代行は社労士にかなりの負担がかかります。助成金の分野は非常に幅広く、提案・申請をするためには、その分野についての知識も求められます。その上、制度の頻繁な変更にも対応しなければなりません。このような理由もあり、助成金の申請を積極的に代行している社労士は少ないのです。
補助金を申請する際の注意点
続いて、補助金を申請する際の注意点として以下の3点を紹介します。
・公募期間が短い
・採択されるにはノウハウが必要である
・受給までに時間がかかる
詳しくみていきましょう。
公募期間が短い
一般的に、補助金の公募期間は1か月~2か月程度です。この期間内に必要な書類を用意して申請します。
補助金を受給できるかどうかは、このときに提出した書類によって決まります。短い公募期間の中で、補助金の受給にとって重要となる書類を用意しなければならないのです。
採択されるにはノウハウが必要である
補助金を受給するには採択される必要があります。採択率は10~50%といわれており、人気がある補助金ほど受給が難しい状態です。
採択されるには、良い提案をすることはもちろん、補助金を活用する妥当性や必要性をきちんと伝えることが大切です。提案内容を審査員に分かりやすく伝えるためには、ノウハウが必要になります。
中小企業診断や行政書士、税理士などの専門家に相談や添削などを依頼し、サポートしてもらうのもひとつの方法でしょう。
受給までに時間がかかる
補助金は、事業計画の実行後、事業の完了報告にもとづく最終的なチェックを経て支給されるのが一般的です。補助金の種類にもよりますが、申請時期から考えて1年近く経ってから支給されるものも多くみられます。
ほとんどの場合、事業計画を実行する段階では補助金が支給されていません。自社で用意したお金で事業計画を実行し、その後補助金が支給されるといった流れになっているため、事業計画をスタートする際に補助金をあてにすることはできないのです。
助成金・補助金を活用する際に知っておきたいこと
ここまで助成金と補助金の違いについて解説してきました。このようにみてくると、助成金と補助金は大きく異なる制度であると認識された方もいることでしょう。
しかし現実的には、その境界はあいまいであることも多く、必ずしも明確に区別されているわけではありません。制度名に「助成金」とついていても補助金の性質が強いものもありますし、その逆もあります。
単に「助成金」「補助金」という名称で判断するのではなく、それぞれの制度の内容を十分に理解した上で活用することが大切です。
助成金に関する最新情報(令和5年3月3日時点)
ここからは、令和5年3月3日時点で公表されている助成金の最新情報をお伝えします。
令和5年度助成金情報
令和5年度より新たに設けられるものと、制度の内容に変更があるものをピックアップして紹介します。
【新設】産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)
「産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)」は令和5年度から新設される助成金です。経済産業省が行う既存の「事業再構築補助金」と連携した助成金で、新事業を展開するために社員を雇い入れた場合に活用できます。
以下、要件と受給額を紹介します。要件が特定されていますので注意してください。
【要件】
事業再構築の前後を通じて、労働者の雇用を確保した上で、当該事業再構築に必要なスキル等を保有する労働者(コア人材)を1人以上、常時雇用する労働者として雇い入れること
引用元:厚生労働省「産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)(仮称)」
※なお「コア人材」とは、専門的なスキルや知識をもつ、年収350万円以上の人をさします
【受給額】
・中小企業:最大1,400万:280万円/1名(最大5名まで)
・中小企業以外:最大1,000万円:200万円/1名(最大5名まで)
【変更】業務改善助成金
「業務改善助成金」とは、中小企業の生産性向上を支援する制度で、活用により最低賃金の引上げをはかる目的があります。
「業務改善助成金」は令和5年度も継続して設けられますが、その内容に変更があります。令和5年度年度補正予算案において、「最低賃金引上げへの対応を支援するための業務改善助成金の拡充」が検討され、助成上限額の引上げや助成対象となる経費の拡充が決定しました。社内に地域の最低賃金に近い賃金で働いている人がいる場合は、活用可能です。
令和5年度より、事業場規模が30人未満の場合、受給額の上限が引き上げられ以下のようになります。
|
30円引上げ |
45円引上げ |
60円引上げ |
90円引上げ |
1人引き上げる場合 |
60万円 |
80万円 |
110万円 |
170万円 |
2~3人引き上げる場合 |
90万円 |
110万円 |
160万円 |
240万円 |
4~6人引き上げる場合 |
100万円 |
140万円 |
190万円 |
290万円 |
7人以上引き上げる場合 |
120万円 |
160万円 |
230万円 |
450万円 |
10人以上引き上げる場合※ |
130万円 |
180万円 |
300万円 |
600万円 |
※賃金や生産量などによる要件あり
参考:厚生労働省「[2]業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援」
【変更】両立支援等助成金
「両立支援等助成金」とは、育児・介護と仕事の両立支援や育児休業の推進、不妊治療を支援する仕組みの整備などを行う中小企業をサポートする制度です。該当する従業員がおり、事業者として支援している場合は活用を検討してみてください。
「両立支援等助成金」も制度の見直しが行われ、令和5年度には以下のような点が変更されます。
・申請時の生産性要件を廃止する
・受給額の引上げや加算の新設などが行われ、制度が拡充する
・「新型コロナウイルス感染症小学校休業等対応コース」が廃止される
一部助成金で電子申請が可能に!
令和5年4月3日には「雇用関係助成金ポータル」がオープンし、雇用関係の一部の助成金が電子申請できるようになります。
先ほど紹介した「両立支援等助成金」のほか、再就職を支援する「労働移動支援助成金」や人材開発に関連する「人材開発支援助成金」など、9つの助成金が対象です。申請のために窓口に出向いたり、窓口の対応可能時間を気にしたりする必要がないため、より申請しやすくなるでしょう。
電子申請についての詳細はこちらをご覧ください。
雇用関係助成金ポータルリーフレット
まとめ
助成金と補助金は、管轄や財源、目的、受給方法などさまざまな点で異なっています。ですので申請の際はそれぞれの制度をよく理解しておくことが大切です。
とはいえ、助成金や補助金の内容を正しく理解するには専門的な知識が必要です。また理解できたとしても、「書類作成から申請まで自社で行うのは負担が大きすぎる」と感じる方もいるのではないでしょうか。
特に助成金に関しては、申請を代行できるのが社労士に限定されています。助成金の申請を検討されている場合は、社労士に相談してみることをおすすめします。
人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。
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