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退職勧奨が違法にならないための注意点!「辞めたくない」と言われた時の対処法も

2022.03.31 コラム

山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。今回は、企業が従業員に対して行う退職勧奨について解説します。やり方を間違えると違法と判断されることもある退職勧奨。実施する際の注意点や手順、従業員に退職を拒否された際の対処法についてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

退職勧奨とは

退職勧奨とは、従業員に対して企業側が退職を勧めることです。「退職推奨」「退職勧告」などと言うこともあります。あくまでも退職を勧める行為なので、法的な効果や、従業員に対する強制力はありません。

退職勧奨と解雇との違い

退職勧奨と解雇の違いは、従業員の同意を必要とするかどうかです。解雇の場合、従業員の同意は必要なく、企業側が一方的に雇用契約を終了させます。一方で退職勧奨の場合、決定権は企業側でなく従業員にあるため、退職勧奨に応じるかどうかは従業員自らの意志によります。解雇と違い、退職には従業員の同意が必要なのです。

解雇ではなく退職勧奨を行う理由

企業が退職勧奨を行う理由は、従業員を解雇するよりも企業側がリスクを負いにくいからです。従業員を解雇するためには、労働契約法第16条にある通り、“合理的で社会通念上相当であると判断できる理由”が求められます。解雇理由が認められない場合には無効とされます。対して退職勧奨は、企業と従業員双方の同意があれば成立するため、選ばれやすいのです。

退職勧奨が行われるのはどんな時?

退職勧奨が行われるのは、一般的に以下のような場合です。

・企業側に原因がある場合

経営不振などによる人員の削減など。

 

・従業員側に原因がある場合

労働者の能力不足、遅刻や無断欠勤などの勤務成績不良、セクハラやパワハラ、従業員が業務指示に従わないなどの問題行為により雇い続けるのが難しい状態。

退職勧奨が違法となる場合

企業側が従業員に対して、やむを得ず退職勧奨せざるを得ないケースがあることを、裁判所は認めています。しかし一歩間違えると、退職勧奨が違法となる場合があります。以下の場合には「退職強要」となり、最悪の場合従業員から裁判を起こされることもありますので注意が必要です。具体的な例も解説しますので、参考にしてください。

脅迫行為があった場合

(例)「退職勧奨に応じなければ解雇する」「懲戒事由に当たる」などと脅す、大声で怒鳴る、机を蹴って脅す、「退職に合意するまで部屋から出さない」と脅すなど。

暴力行為があった場合

(例)自分の手足や身の回りの物などを使って、叩いたり蹴ったりする。

退職しない意向を示しているにも関わらず度々退職を促した場合

(例)従業員が「退職したくない」という意向を示しているにも関わらず、その後も退職に応じるよう求める。

何度も長時間にわたって退職推奨を行った場合

(例)1日に何度も従業員を呼び出す、毎日のように面談を行う、何時間も面談を行うなど。

従業員が退職に向かうよう嫌がらせをした場合

(例)仕事量を減らす、これまで担当してきた仕事を変える、過度に仕事を押し付ける、他の従業員の前で非難する、従業員に対する悪い噂を流して人間関係を悪化させるなど。

不当な転勤や出向などにより心身に負担を負わせた場合

(例)退職勧奨に応じなかった従業員を、正当な理由なく転勤させたり出向させたりすることによって心身に負担を負わせるなど。

退職に応じざるを得ないと思わせる発言があった場合

(例)「退職に応じないのであれば減給する」などの発言や、事実に反して昇進できない旨や移動ポストがない旨を話すなど。

従業員に対して不当な圧力をかけたり、意思を尊重しなかったりする退職勧奨は問題となるので、注意しましょう。

退職勧奨が違法と判断された時の責任

退職勧奨が退職強要と判断され違法となった場合、退職勧奨を実際に行った従業員に加え、使用者も責任が問われることも。損害賠償責任として慰謝料を請求されたり、退職が無効となったりする場合があります。

退職勧奨が違法にならないための注意点6

退職勧奨が違法行為にならないように、注意すべき点がいくつかあります。知らずに面談を行ってしまっては手遅れになりかねません。退職勧奨の面談を行う前に、必ずよく確認しておきましょう。

①必要とされる回数より多く面談を行わない

合意を目指して何度も繰り返し面談を行うことは、退職勧奨を超えて退職強要と判断されてもおかしくありません。どうしても複数回行わなければならない場合には、目的を変えて実施しましょう。

例えば、

・1回目:勤務成績不良などに対する指導

・2回目:退職のメリットや会社に残るデメリットなどの説明

・3回目:従業員の意志を聞くための面談

上記のように、場面ごとに話し合う内容を変えることが大切です。何度も退職を勧めるための面談を行ってしまうと、違法と判断される可能性があるので注意しましょう。

②長時間にわたる面談は行わない

1回あたりの面談時間が2時間を超えないようにしましょう。長時間にわたって従業員を拘束することは、心身の負担となるとともに、執拗に退職を強要していると判断されかねません。

11での面談、多人数での面談は避ける

面談を11で行うと、お互いが感情的になってしまう場合があります。常に冷静な対応をするためにも、企業側の担当者を2人にすると良いでしょう。2人のうち1人は、あくまで記録や面談実施者の監視として参加させるのがポイントです。

企業側の面談実施者が多すぎても、従業員に対して威圧的であると捉えられることがあります。多くても23人で行いましょう。

④面談の際は録音されていることを前提に話す

従業員が後々の備えとして、面談の内容を録音している場合があります。面談を行う際には、録音されていることを前提に退職勧奨を行いましょう。

従業員自身で意思決定をさせないような発言や誹謗中傷、脅迫など、従業員に不当に不利益を与える発言は、違法となる場合があります。

⑤即日で回答を求めない

退職勧奨の面談を行った場合には、従業員に考える時間を与えることが重要です。即日で回答を求め、従業員が退職以外の選択肢がないと思って退職を希望した場合には、後で合意が無効となるケースがあります。

⑥退職を明確に拒否された場合にはそれ以上勧奨しない

従業員が「退職はしたくない」という意志をはっきりと示した場合には、一旦退職勧奨を中断します。従業員が意志を明示しているにも関わらず退職勧奨の面談を行い続けた場合には、回を重ねるごとにリスクが高まります。

それでも面談を行わなければならない場合には、退職を受け入れなかった理由を考慮し、退職の条件を改めて新たな提案を行うなどの対応が必要です。

退職勧奨を適切に行うには、各々の企業に合わせた対応策の検討が必要です。社会保険労務士法人中込労務管理では、企業の状況に応じてご提案をさせていただいておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

退職勧奨をスムーズに進める退職条件

従業員に退職を受け入れてもらいやすくするには、退職条件を優遇することが効果的です。退職条件は、従業員から求められる場合もあります。以下に例を示しますので、ぜひ参考にしてみてください。

・退職金が加算されること

・再就職先を会社が斡旋すること

・有給休暇を付与すること

・賃金を数ヶ月分保証すること

・退職理由を自己都合ではなく会社都合にすること

(自己都合退職の場合、失業保険が3ヶ月間受け取れない上、給付日数が30日〜150日の間のみと定められています。会社都合の場合、失業後7日後から受給可能で、給付日数も30日〜330日と長期間受け取ることができます。)

従業員が退職勧奨に応じない場合の対処法

 

退職勧奨を行っても、従業員が応じない場合も十分考えられます。従業員が「退職したくない」という意志を示した時の対処法を知って、事前にできるだけの準備をしておきましょう。

退職条件を見直して提案する

従業員が退職を拒否する理由を考慮して、従業員が希望する条件を追加提案する方法です。退職の条件を優遇することで、従業員の退職合意を得られやすくなる可能性があります。

解雇を検討する

正当な理由なく従業員を解雇することはできませんが、客観的な合理的理由があれば解雇できる可能性があります。例えば、就業規則の違反行為や問題行動などがあり全く改善されない場合や、経営状況の悪化によりやむを得ず人員整理を行わなければならない場合などです。

辞めさせられない場合もある

解雇できる理由がないと、従業員を辞めさせられないこともあります。退職勧奨を行う際には、従業員に拒否されることを前提に事前準備を行っておくのが賢明です。従業員に非がある場合には、指導や懲戒処分などを行って解雇できる客観的理由を積み重ねてから退職勧奨に踏み切るなどの対応ができます。

退職勧奨を進める手順

実際に退職勧奨を進める際には、正しい手順を踏むことでトラブルを未然に防げる場合があります。以下の手順を参考にしてみてください。

①退職勧奨の方針や理由を社内で共有する

従業員の退職勧奨について、本人直属の部下を始め会社の上層部に状況を共有します。個人の一意見で退職勧奨が行われたと判断されないよう、会社の総意としてまとめましょう。

②退職勧奨の理由をまとめたメモを作成する

退職勧奨の対象となる従業員だけでなく、面談を行う従業員にも、大きな負担がかかります。正当な理由をわかりやすく伝えるためにも、事前に要点を整理したメモを作成しておきましょう。

③従業員と面談を行い退職勧奨について伝える

準備が整ったら、従業員との面談を行います。「退職してほしい」という会社の意向を伝える際には、先述した注意点を守り、違法とならないよう落ち着いて対応しましょう。

④期限を設けて従業員に検討してもらう

期限は最低でも1週間程度設け、従業員が自ら考えをまとめられるよう配慮が必要です。連続で面談を行うことのないよう、期間を空けてから次の話し合いを行うようにしてください。

⑤退職する時期や金銭面などの処遇について話し合う

従業員が退職勧奨に合意する意志を示したら、退職に関する条件について話し合いましょう。ボーナス支給などを考慮して退職する時期を設定したり、退職金の金額などについて話し合ったりします。従業員の経済状況を考えて、退職金の他に解雇予告手当の支給を行うことも可能です。

⑥退職勧奨同意書の作成や退職届の受理を行う

退職勧奨同意書や退職届は、従業員が退職勧奨に応じたことを証明する書類です。書類のやり取りを行わなかった場合、従業員に後々「不当に解雇された」と主張されるリスクがあります。退職勧奨同意書や退職届は、解雇ではないことを示す大切な証拠ですので、必ず作成、受理を行いましょう。

退職勧奨に関するご相談は社会保険労務士まで

退職勧奨は、正しい知識を元に行わないと違法と判断される可能性があり、慎重な対応が必要です。退職勧奨を行う際には、今回解説した内容をよく確認して、退職強要にならないよう十分注意しましょう。

「退職勧奨」について、少しでも難しいと感じられた場合は専門家へ相談することをおすすめします。社会保険労務士法人中込労務管理では、就業規則に強い専門家が対応させていただきます。

中込労務管理事務所編集部
執筆者情報 中込労務管理事務所編集部

人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。

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