テレワークの導入方法を解説!メリットやデメリットも知っておこう
- 2022.03.31 コラム
山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。今回は「テレワーク」について解説します。
本記事では、テレワークのメリットやデメリットのほか、テレワークの導入方法や導入時のポイント、注意点までくわしくまとめました。
その事例をもとに、解説しておりますのでぜひ参考にしてください。
テレワークを導入することで、企業の価値を高める効果も期待できます。本記事がテレワーク導入のきっかけになりますと幸いです。
テレワークの現状
現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、民間企業においてテレワークの導入が進んでいます。
総務省の調査によると、2021年3月時点でのテレワーク実施率は全体で38.4%でした。
その内訳を見ると、大企業では69.2%なのに対し、中小企業では33.0%。中小企業にとって、テレワークの導入はハードルが高いことがわかります。
一方で、テレワークを経験した労働者のうち64.3%がテレワークに満足したという、国土交通省の調査結果があります。同調査では、81.5%の労働者が「今後もテレワークを実施したい」と回答していました。
今後、テレワークは一般的な働き方となるかもしれません。
テレワークの導入がもたらすもの
多くの企業でテレワークの導入が進んでいます。しかしテレワークで効果を得るためには、「テレワークを導入することで自社にとってどのようなメリットがあるのか」をしっかりと判断することも大切です。
ここからは、テレワークを導入するとどのようなメリットが得られるのかを紹介します。あわせてデメリットについても知っておきましょう。
テレワークを導入するメリット
テレワークには、企業側にも労働者側にも、社会的にもメリットがあります。
中でも、企業にとってのメリットとして考えられるのは以下のような点です。
- 優秀な人材を確保できる
- オフィスコストを削減できる
- 企業イメージが向上する
それぞれについて説明していきます。
優秀な人材を確保できる
出勤の必要がないテレワークでは、人材をフレキシブルに活用できるため、優秀な人材を確保しやすくなります。
例えば、遠方に住んでいてオフィスに出勤できない人や、働く時間に制限がある人の中にも、高いスキルをもつ人材は隠れているでしょう。
テレワークなら時間や場所を限定しないため、そのような人がもつ高いスキルを業務に生かせるのです。
同様の理由から、テレワークはライフステージの変化に対応できる働き方でもあります。従業員の環境に合わせて柔軟に対応できるため、優秀な人材の離職を防げるでしょう。
オフィスコストを削減できる
テレワークの導入によって、オフィスでは必要だった下記のようなコストを削減することができます。
- 交通費
- オフィスの賃料
- 電気代
- 設備代
- 印刷代
出勤する必要がなくなると、従業員の交通費がかかりません。
また、従業員一人ひとりにスペースを確保する必要がないため、オフィスのスぺースが削減でき、オフィスの賃料もカットできます。
さらに、照明や空調などの使用量も減ることから、電気代の削減にもつながります。
そのほか、テレワークを導入すると多くの書類が電子化されますので、紙の使用量が減少し、印刷代も削減できるでしょう。
総務省の試算では、テレワークにより、オフィスでの電力使用量は1人あたり43%カットできる可能性があると公表されています。
もちろん、テレワーク導入のために別途費用が必要です。しかし、長期的にみるとコスト削減になるのです。
企業イメージが向上する
テレワークを導入していることで、企業のイメージアップにもつながります。
というのも、現在テレワークは国をあげて推進されている働き方です。
新しい働き方にいち早く対応しているということから、「新しい取り組みを積極的に受け入れる企業」をアピールできるでしょう。
とくにコロナ禍においては、「従業員に配慮した働きやすい企業」といったイメージをもたれやすいようです。
テレワークを導入するデメリット
テレワークにはもちろんデメリットもあります。
中でも多くの企業が懸念しているのが、
- 従業員の勤怠管理が複雑になる
- コミュニケーションが不足しやすい
- セキュリティリスクが高まる
といった3点です。
それぞれくわしく解説していきます。
従業員の勤怠管理が複雑になる
テレワークを導入する際に難点となるのが、従業員の勤怠管理の複雑さです。
テレワークを導入していない企業の中には、この点を理由にあげていることもめずらしくありません。
実際、テレワークをしている従業員の労働実態を把握することは難しいもの。出勤時刻や残業時間を自己申告するシステムとしている場合、信ぴょう性に疑問を感じるケースもあるかもしれません。
また、勤怠管理の複雑さゆえに、企業側が従業員の労働実態を把握できず、長時間労働をまねいてしまう不安もあるでしょう。
コミュニケーションが不足しやすい
自宅などで仕事をするテレワークでは、従業員同士でコミュニケーションをとる機会が不足しやすいです。
従業員同士で情報共有がうまくできていないことで、業務に支障が出ることも考えられます。
オフィスに出勤していれば、日常会話を交わすこともあるでしょう。しかしテレワークでは、業務以外の会話をする機会が減少するため、孤独を感じやすくなってしまいます。
ネガティブな感情をひとりで抱え込んでしまうこともあり、精神的な負担を感じることもあるでしょう。
もちろん、Web会議ツールやチャットツールなどを導入すれば、ある程度のコミュニケーションはできます。しかし、デジタルツールから細かいニュアンスを読み取ることは難しいもの。
対面で交わすコミュニケーションとは様相が異なりますので、心理的なハードルの高さを感じる場合もあるようです。
セキュリティリスクが高まる
テレワークでは、オフィスで勤務する場合に比べて、セキュリティリスクが高まります。
とくにコワーキングスペースやカフェなどで業務を行う場合には、セキュリティ面が懸念されます。
具体的な懸念事項としては、
- パソコンの画面を第三者に見られる
- デバイスを紛失する
- デバイスの盗難にあう
- 安全性が確実ではないフリーWi-Fiの利用によって、情報が漏洩してしまう
といったことが考えられます。
本記事では、このようなデメリットを解消し、円滑にテレワークの導入ができるようにポイントを解説していきます。ぜひ最後まで読み進めてください。
テレワークを導入する方法
ここからは、実際にテレワークを導入する方法をお伝えします。
テレワークを導入するための、大まかなステップは以下の通りです。
1.テレワークを導入する目的と基本方針を明確にする
2.テレワーク推進チームを立ち上げる
3.現在の状況やテレワーク導入に際しての課題を把握する
4.テレワークを導入するためのルールと環境を整える
5.テレワークを実際に行い評価する
それぞれの段階を具体的に説明していきます。
1.テレワークを導入する目的と基本方針を明確にする
テレワークを導入する前に、その目的と自社の基本方針を明らかにしておくことが大切です。
なぜなら、目的や基本方針がはっきりしていないと、テレワークを導入した時点で満足してしまい、自社の発展につながらない場合があるからです。
テレワークを導入する目的としては、以下のようなことが考えられます。
- 優秀な人材を雇用したい
- 優秀な人材の離職を防ぎたい
- オフィスコストを削減したい
- 自社のデジタル化を促進したい
コロナ禍においては「従業員の健康を守りつつ、事業を継続させたい」といった目的もあるかもしれません。
また、目的の優先度についても検討しておくと基本方針を設定しやすいです。目的の明確化と同時に、優先度についても考えておきましょう。
基本方針として考えるべきことは、
- テレワークを導入する部署
- テレワークの対象となる業務
- テレワークを実施する頻度
- どのようにテレワークを導入するのか
といった内容です。
対象範囲をはっきりさせることで、テレワークを導入しやすくなるでしょう。
2.テレワーク推進チームを立ち上げる
社内の足並みをそろえるためには、従業員がテレワークの意義を理解することが大切です。テレワーク推進チームを立ち上げ、社内体制を整えておきましょう。
テレワーク推進チームは、
- 経営・企画部門
- 人事部門
- 総務部門
- 情報システム部門
- テレワークを導入する部門
などのメンバーで構成します。
部門を越えたメンバーでチームを作ることで、さまざまな観点からテレワークに関する議論を行えるでしょう。
従業員数が少ない場合は、チームではなく専任者を配置し、テレワークに関するノウハウを集約することをおすすめします。
3.現在の状況やテレワーク導入に際しての課題を把握する
具体的に導入する前に、現在の状況を確認し、テレワーク導入後の変化をイメージします。その内容をもとに、テレワーク導入に際しての課題を明らかにしていきましょう。
まず以下の点について、テレワークの前後でどのように変わるのか確認します。
- 業務の進め方
- 人事評価制度
- 勤怠管理
とくに、人事評価制度や勤怠管理についてはトラブルになりやすいです。課題や懸念点をしっかりと話し合いましょう。
次に業務内容について、以下の3つに分類してみましょう。
- 現状のまますぐにテレワークに移行できるもの
- ツールの導入や対策次第でテレワークが可能となるもの
- テレワークでは対応できないもの
最後に、テレワークを導入するためには、どのような対策をする必要があるのかを明らかにします。そのために、以下のようなポイントについて確認しておくことが大切です。
- ネットワーク環境が整っているか
- セキュリティ環境が整っているか
- 個人情報を取り扱う業務があるか
- 個人情報に関する取り扱いルールは明確か
4.テレワークを導入するためのルールと環境を整える
ここからは、実際にテレワークを導入するための、ルールや環境を整える段階です。
ルール作り
もちろんテレワークを行うときにも、労働に関する法律を遵守する必要があります。
テレワークでは労働実態が見えにくいため、とくに労働管理についてしっかりとルールを作っておく必要があるでしょう。
就業規則を見直す
テレワークでトラブルにならないためにも、労使間であらかじめルールを作っておくことが必要です。
就業規則を見直し、テレワークに関する規定を追加しておきましょう。就業規則の変更が難しい場合は、「テレワークに関する規程」を別に定める方法でも構いません。
テレワークを導入するときに就業規則に追加する項目は、
- テレワークを命じる旨
の4点です。
テレワークを行うと、通信費や光熱費などのコストが発生します。コストについてもあらかじめ取り決めておくことで、従業員も安心してテレワークを受け入れられるでしょう。
就業規則の見直しに関して少しでも難しいと感じられた場合は、専門家に相談することをおすすめいたします。
社会保険労務士法人中込労務管理では、企業の状況に応じてご提案させていただいておりますので、お気軽にご相談ください。
勤怠管理の仕組みを作る
テレワークを導入する前に、勤怠管理の仕組みを具体的に考えておく必要があります。とくに、勤務開始・終了時刻の報告の仕方や記録の方法については必須です。
働き方改革によって、時間外労働の上限規制が強化されました。労働時間を客観的に把握できる仕組みを作っておくことは、企業にとっても重要だといえるでしょう。
導入にコストはかかりますが、ツールを使用して勤怠管理を行うのもひとつの方法です。
コスト
- 自社に合ったシステムか
- 従業員が使いやすいか
といったことを総合的に評価し、ツールの導入を検討してみましょう。
ネットワーク環境の整備
テレワークを導入するためには、ネットワーク環境の整備が欠かせません。
現在使っているネットワークがテレワークに使えないか、確認してみることをおすすめします。新たに環境を整える必要がある場合は、前もって対応しておきましょう。
従業員の教育やサポートの体制作り
テレワークを実施する前には、従業員の教育や研修を行います。
これは、テレワークの導入を成功させるために、必要不可欠なステップ。テレワークに関する認識を共有し、テレワークを円滑に遂行するために役立ちます。
教育や研修を行うときには、テレワークの対象者だけでなく、全社員に向けて行うことが望ましいでしょう。
社員全員が認識を合わせることで、テレワークを最大限に活用でき、大きな効果につながると考えられます。
それに加え、テレワーク対象者のサポート体制を整えておくことも必要です。
テレワークを行う従業員の中には、ツールやデバイスの操作に不慣れな人もいるかもしれません。テレワーク中にトラブルが生じた場合のサポート体制を構築しておくことで、従業員は安心して業務を行えるでしょう。
また、従業員同士でコミュニケーションをとれるような仕組み作りも大切です。孤独や不安をひとりで抱え込まないような体制を作ることで、従業員をメンタル面からもサポートしましょう。
5.テレワークを実際に行い評価する
ここまで準備ができたら実際にテレワークを行い、問題点や改善点などを評価します。
テレワークを経験した従業員へのヒアリングや、テレワークで遂行できた業務内容などを、今後の参考にしましょう。
テレワークを導入するときのポイント
テレワークを導入するときに押さえておきたいポイントを4点お伝えします。
テレワークの導入を成功させるために大切なことばかりですので、しっかりと確認しておきましょう。
テレワーク導入前の準備を入念に行う
「テレワークを導入しよう」と考えると、即座に具体的な導入方法を検討してしまうかもしれません。しかし、テレワークを導入するときには、導入前の準備段階が非常に大切です。
導入前の準備とは、
- テレワークを導入して自社はどうなりたいのか
- どのような目的でテレワークを導入するのか
といった内容を検討することです。
準備段階は時間がかかるため割愛したくなるかもしれません。また、早急にテレワークを導入したいと考えている場合、準備段階に割く時間が惜しいと思うこともあるでしょう。
しかし、導入前にどのような準備を行うかによって効果に大きな差が出ますので、しっかりと検討することをおすすめします。
テレワークに関する啓発や研修を行う
テレワークを導入するときには、普及の啓発を積極的に行いましょう。テレワーク対象者だけでなく全社員に研修を行い、テレワークに関する認識を共有します。
テレワークを推進する立場から発信するだけでなく、従業員の不安や意見をしっかりと受け止めることも大切です。従業員をサポートし、フォローアップできる環境を整えましょう。
テレワークで必要な経費について決めておく
テレワークで必要となる通信費や光熱費などの経費については、労使間で取り決めを行い、就業規則などに明記しておきましょう。あらかじめルールを定めておくと、トラブルを防ぐことができます。
社員間で認識のズレを起こさないためにも、テレワーク対象者以外の社員にも取り決め内容を共有しておくとよいでしょう。
テレワーク導入時に利用できる助成金を申請する
テレワークを導入するに際し、コスト面が気になる場合もあるでしょう。
実は、テレワークの導入を後押ししてくれる助成金制度は複数あります。利用してみてはいかがでしょうか。
以下の2つの制度は、中小企業向けに展開されているものです。
- 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
- IT導入補助金2022
「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」は、テレワークを新規導入する事業主だけでなく、新たに試行的に導入している事業主も対象となりました。
また、ウイルス対策やエンドポイントセキュリティサービス、コミュニケーションサービスなどの利用料も助成の対象となっています。
「IT導入補助金2022」は、ITツールの導入に活用できる制度。例年、申請は3月下旬頃となっていますので、2022年も同様と考えられます。
テレワークを導入するときの注意点
テレワークは、企業の可能性を広げる働き方です。しかし、注意しておかなければいけない点もあります。
ここでは、テレワーク導入時に知っておくべき2つの注意点を解説していきます。
テレワーク導入のためのルール作りが難しい
解説してきたように、テレワークを導入するためにはルールが必要です。
ルールがあいまいなままテレワークをはじめると、従業員が不安や不満を感じてしまうこともあるでしょう。情報漏洩などにより、企業に大きな損失となる恐れも考えられます。
このような事態を防ぐために、就業規則や社内規程の作成をしておきましょう。
事前に検討しルールを作ることはもちろん、テレワークを進めながら新たにルールを作るといった柔軟な対応も必要でしょう。
テレワークでは行えない業務もある
テレワークでは完遂できない業務があることも、頭に入れておかなければなりません。
機械の操作が必要な業務や、人と直接対面することが必要な業務など、テレワークではできない業務もたくさんあります。
このような業務において、完全にテレワークとすることは難しいです。
オフィスでしかできない業務は出勤日にまとめて行うなど、テレワークとオフィス出勤を組み合わせるといった工夫も必要かもしれません。
まとめ
テレワークは、企業・労働者・社会のあらゆる面でメリットがある働き方です。
新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにテレワークを導入する企業も増えており、私たちにとっても身近なものとなりつつあるのではないでしょうか。
しかし、いざ導入するとなると、わからないことや不安なことも多いでしょう。
社会保険労務士法人中込労務管理では、実際に自社内でテレワークの環境を整えています。その実体験から、テレワークのノウハウをお伝えすることが可能です。テレワークについてお困りの際は、ぜひ中込労務管理にご相談ください。
人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。
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