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【2024年医師の働き方改革】宿日直許可を取得すべき理由や許可基準を社労士が解説

2022.12.26 お知らせ・セミナー情報コラム

医師の男女山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。今回は、2024年4月からはじまる「医師の働き方改革」において、必要となる「宿日直許可」について解説します。

働き方改革における宿日直許可の内容を理解していますか?許可を得ていなくても宿日直勤務をさせることは可能です。

しかし許可を得ていない場合、宿日直時間は労働時間とみなされてしまうため、「時間外労働規制」の上限を超えてしまうことが予想されます。加えて、連続勤務時間制限や勤務間インターバルといった「追加健康確保措置」の制限も受けてしまうため、宿日直や通常勤務ができなくなる医師が発生する恐れがあります。

地域の医療を守るためにも、宿日直許可について正しく理解し、適切に準備を進めることが必要なのです。

そこで本稿では、宿日直許可が必要な理由や許可の申請方法、許可を得られる基準についてくわしく解説します。あわせて、医師の働き方改革に向けて今できることもお伝えします。

まずは前提として、宿日直の概要からお話しましょう。正しく理解できているかあらためて確認してみてください。

宿日直を理解することは医師の長時間労働を考える際に重要です

頭を抱える医師の男性通常の労働時間外に通常の勤務とは異なる業務を行う「当直勤務」には、日中に行われる「日直」と夜間に宿泊して行われる「宿直」の2種類があります。労働基準法では日直と宿直をあわせて「宿日直」と呼んでいます。この宿日直を正しく理解することは、医師の長時間労働を考える際の重要なポイントです。

医師の宿日直を理解するための2つの法律とは?

ページの開かれた六法全書
医師の宿日直を理解するためには、労働基準法と医療法という2つの法律を知っておく必要があります。医師の宿日直は、労働基準法と医療法をともに満たしていなければなりません。

それぞれの法律における、宿日直の規定についてあらためて確認しておきましょう。

労働基準法


労働基準法では、宿日直を以下のように規定しています。

・常態としてほとんど労働の必要性がないこと
・宿直は週1回・日直は月1回を限度とすること

これはどのような職業においても適用される考え方であり、もちろん医師も例外ではありません。この条件に適合し、かつ労働基準監督署の許可を得た場合には、宿日直の時間は労働時間とみなされないことになります。つまり、労働時間や休憩、休日などの規制が適用されないということです。

医療法

医療法では、「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」と定められています。そして宿日直については、以下のような規定が設けられています。

・通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のもの
・特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限る
・夜間に十分な睡眠をとれること

「特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務」とは、たとえば問診や軽度の処置、看護師などに対する指示などが該当します。

医師が宿日直を行う際は、労働基準法に加え医療法の規定も満たし、さらに労働基準監督署の許可を得ていれば、労働時間としてみなされないことになります。

宿日直許可が必要な理由

Why?Becauseのイラスト
記事冒頭でもお伝えした通り、2024年4月より医師の働き方改革がはじまります。2024年4月以降、医師に宿日直勤務をさせる場合には、労働基準監督署の許可を得ることが必要になります。

とはいえ許可を得ていないと、宿日直にあたれないというわけではありません。許可を得ていなくても、宿日直の時間帯に医師を勤務させること自体は可能です。

しかし許可を得ていないと、宿日直の時間が労働時間とみなされます。そのため、医師の働き方改革で厳しくなる「時間外労働規制」の上限を超えてしまうことでしょう。時間外労働規制を超えて時間外労働をさせることはできませんので、その医師は宿日直にあたれなくなってしまいます。

その上、宿日直が労働時間だとみなされると、連続勤務時間制限や勤務間インターバルといった「追加健康確保措置」の制限にもふれてしまいます。宿直明けの医師が通常勤務にあたれないケースも考えられるのです。

このように、宿日直許可を得ていないと医療体制を維持できなくなることが懸念されます。それゆえ、働き方改革に向けた準備として宿日直許可を得ることが急務となっています。

宿日直許可を得るには

申請書とペン
宿日直許可を得ることの重要性がおわかりいただけたところで、ここからは、具体的な申請方法について解説します。

申請方法


宿日直許可の申請は、以下の手順で行います。

1.労働基準監督署に「申請書」と「添付書類」を提出する
2.労働基準監督官が実地調査を実施する
3.許可される場合、「断続的な宿直又は日直勤務許可書」が交付される

まず申請者(医療機関)が、労働基準監督署に申請書と添付書類を提出します。労働基準監督署は、提出された書類を精査し、宿日直勤務の実態が条件を満たしているかどうかを確認します。書類による確認に要する期間は1週間程度で書類上問題ないと判断されると、労働基準監督官が医療機関に実地調査に入ります。

実地調査で労働基準監督官は、以下のようなことを実施します。
・宿日直時の待機場所の確認
・直近数か月程度の勤務記録の提出要請
・実際に宿日直勤務にあたる医師などへのヒアリング

大阪府医療勤務環境改善支援センターの「『医師、看護師等の宿日直許可申請』マニュアル」によると、実地調査のヒアリングでは以下のようなことを聞かれるようです。
・宿日直勤務時の業務負担の程度
・時間外に外来を訪れる患者の人数
・緊急時に入院患者に対応する頻度

実地調査では、提出した書類の内容と実態に相違がないかを確認します。実地調査でも問題ないと判断された場合は、実地調査後1週間程度で宿日直許可が下り、「断続的な宿直又は日直勤務許可書」が交付されます。

申請に必要な書類


宿日直許可の申請に必要な書類には、以下のようなものがあります。

・宿日直当番表
・宿日直日誌や急患日誌
・宿日直中に従事する業務内容
・業務内容ごとの対応時間がわかる資料(電子カルテのログや急患日誌などをもとに作成したもの)
・仮眠スペースやシャワー室など、宿日時の待機場所がわかる図面や写真
・宿日直勤務者の賃金一覧表
・宿日直手当の算出根拠がわかる就業規則

一般的にはこのような書類を求められることが多いです。場合によって、労働基準監督官が必要だと判断した書類の提出を求められることもあります。

宿日直の許可基準

チェックリストと虫眼鏡宿日直許可の申請をした際、労働基準監督署はどのような基準で判断を下すのでしょうか。ここでは、宿日直の許可が与えられる基準についてみていきます。

「断続的な宿日直の許可基準(一般的許可基準)」は以下の通りです。これは医師を含めどのような職業であっても、宿日直許可を得るために必要な基準です。

1.常態としてほとんど労働することがないこと
2.通常の労働の継続ではないこと
3.宿日直手当額が同種の業務に従事する労働者の1人1日平均額の3分の1以上であること
4.宿日直の回数が、原則として宿直は週1回、日直は月1回以内であること
5.宿直について相当の睡眠設備を設置していること
引用元:厚生労働省「医療機関における宿日直許可について ~制度概要・申請後の流れ~」

医師の場合、上記の基準に加え、以下の「断続的な宿日直の許可基準(医師、看護師等の場合)」も満たす必要があります。

・通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること
・特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること
・宿直の場合は、夜間に十分睡眠がとり得ること
引用元:厚生労働省「断続的な宿日直の許可基準について」

宿日直の許可は、所属診療科や時間帯、業務の種類などを限定して得ることもできます。たとえば深夜の時間帯のみ、病棟の宿日直業務のみといった申請も可能です。もちろん、大学病院のような大きな医療機関や救急、産科でも宿日直許可を得られます。

厚生労働省の資料では、宿日直の許可事例が公表されていますので、参考にしてみてください。

【2024年「医師の働き方改革」に向けて】宿日直許可に関して今できること

医師の男女2024年4月からはじまる「医師の働き方改革」に向けて、宿日直許可を得ることの必要性についてはおわかりいただけたと思います。現状で宿日直許可の基準を満たしていない場合は、業務の見直しから取り組むことが必要です。基準に適合している場合は、宿日直許可の申請準備に取りかかりましょう。

普段の業務で忙しい中、働き方改革に向けて備えていくのは難しいことだと思われます。宿日直許可についてお困りの際は、勤務環境改善に取り組む医療機関を支援する「医療勤務環境改善支援センター」や所轄の「労働基準監督署」に相談してみてはいかがでしょうか。

これらの機関では、無料でサポートを行っています。宿日直許可の取得を断念していた医療機関が、相談を通じて再度申請を行った結果、許可を得られたという事例もあります。少しでもお困りの場合は、早い段階で相談するのがオススメです。

また、人事労務に特化した社会保険労務士法人中込労務管理では、これまで多くの医療関係者様をサポートしてきました。その経験をいかし、医師の働き方改革に向けての準備を一緒に行っていきますので、お気軽にご相談ください。

宿日直許可を取得した後の注意点

パソコンの前で人差し指を立てるスーツの男性
労働基準監督署から許可が下りると、「断続的な宿直又は日直勤務許可書」が交付されます。これには宿日直の回数などに関する「付かん」が記載されており、許可取得後はこの付かんに即した宿日直を実施することが求められます。

許可書には有効期限はありませんので、一旦許可を受けるとよほどのことがない限り取り消されることはありません。とはいえ、もちろん許可基準に即した宿日直を継続することが大切です。もし人員異動や業務内容の変更などがあった場合は、基準に適合できるよう勤務内容を見直すなどの柔軟な対応が必要になります。

まとめ

書類を記入する2名医療体制を維持するには、2024年4月の医師の働き方改革施行までに、宿日直許可を得ておく必要があります。現状で宿日直許可の基準を満たしていない場合は、基準を満たせるよう業務の見直しをしてみましょう。「見直しが難しい」「どのように対処したらよいかわからない」などとお困りの場合は、医療勤務環境改善支援センターや労働基準監督署へ相談するのもひとつの方法です。

社会保険労務士法人中込労務管理でも、医師の働き方改革に向けた準備のサポートを行っております。安心して2024年4月を迎えるためにも、まずはご相談ください。

中込労務管理事務所編集部
執筆者情報 中込労務管理事務所編集部

人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。

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