経営者・個人事業主が知っておくべきiDeCoを使った資産形成とは?
- 2023.02.01 お知らせ・セミナー情報コラム
山梨を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人中込労務管理です。今回は、iDeCo(個人型確定拠出年金)について解説します。
様々な税制優遇を受けながら、老後の資産形成ができる制度として注目されているiDeCo。確定拠出年金制度の概要や種類、iDeCoを活用するメリット、iDeCoを始める際の注意点などについてお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
確定拠出年金の基礎知識
確定拠出年金は、DCとも呼ばれ、加入者自身が決めた掛金を自分で運用し、その運用結果によって給付額が決まる年金制度の一つ。DCとはDefined Contributionの略で、掛金額が決められているという意味です。「掛金建て年金」と言われる場合もあります。
確定拠出年金には、以下の特徴があります。
・掛金を加入者が自分で運用する
・運用の結果に応じて給付額が決まる
・年金資産が個人ごとに完全に切り分けられていて、残高をいつでも確認できる
・転職や退職があった際には、拠出年金制度内で年金資産の持ち運びができる
・掛金を拠出する際と、運用時、給付時に税制が優遇される
確定拠出年金の2つのタイプ
確定拠出年金の中に、企業型年金(企業型DC)と、個人型年金(iDeCo)の2つがあります。それぞれについて詳しく解説しますので、確認しておきましょう。
企業型年金(企業型DC)
企業型DCは、事業主が主体となって行われる制度。加入者は、事業者が使用する従業員です。掛金は、事業主が拠出する以外にも、規約に定めることによって事業主の掛金に加入者が掛金を上乗せして拠出することができます。この仕組みをマッチング拠出と言います。
個人型年金(iDeCo)
iDeCoは、国民年金基金連合会が実施している制度。20〜59歳の全ての人が加入できます。また、国民年金の任意加入被保険者又は厚生年金の被保険者は、65歳になるまで加入できます。
掛金は、加入者本人が拠出します。
iDeCoとは?
iDeCoは、自分で掛金の額を決めて積み立て運用し、60歳以降に年金として受け取れる制度です。加入しいている公的な年金に個々人がプラスできる私的年金。大きな税制優遇措置が取られているのが特徴です。
公的年金と異なる点は、加入が任意であること、掛金・運用商品を自分で選べる点です。60歳以降に、掛金と運用益を合わせて受け取れます。
iDeCoを活用した節税対策
iDeCoを活用すると、以下の3つ点で節税対策になります。
掛金が全額所得控除になる
掛金が全額所得控除になるのは、iDeCoの一番のメリットと言えます。こちら に年収や年齢、月々の掛金を入力することで、いくら資産形成できるのか、いくら節税につながるのか簡単にシュミレーションできます。
運用益が非課税で再投資できる
通常、金融商品を運用した場合、その運用益に対して20.315%課税されるもの。しかし、iDeCoは、運用益に対して非課税で再び投資に回すことができます。
受け取る時にも大きな控除になる
iDeCoは、受け取り方を選ぶことができ、その際に受け取り金が課税の対象になりますが、受け取り方法に応じて控除を受けられます。
iDeCoはどのような人が対象者?加入できない人は?
iDeCoの対象者を4つの区分に分けて解説します。
国民年金第1号被保険者
20〜59歳の自営業者とその家族、フリーランス、学生などが加入できます。
加入の対象とならないのは、農業者年金の被保険者、国民年金の保険料納付を免除または一部免除されている方です。ただし、障害者基礎年金を受給されている方の加入は可能です。
国民年金の第2号被保険者
厚生年金の被保険者で、会社員や公務員などが該当します。
勤務先で、企業型DCに加入している方は、以下の全ての条件に当てはまる場合にのみ加入できます。
(1)企業型DCやiDeCoの掛金が各月拠出である場合。
(2)企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金を合算して、各月拠出の限度額を超えていない場合。
(3)企業型DCの加入者掛金を拠出していない場合。
加入対象とならないのは、勤務先で加入している企業型確定拠出年金の事業主掛金が、拠出限度額の範囲内で、各月拠出となっていない場合。また、加入者も掛金を任意で拠出できるマッチング拠出を導入している企業型DCに加入している場合で、企業型DCでマッチング拠出を選んでいる方です。
65歳以上の厚生年金被保険者で、加入期間が120月以上あり老齢年金の受給権を有する方は、国民年金の第2号被保険者に該当しないので注意が必要です。
国民年金の第3号被保険者
厚生年金の被保険者に扶養されている20〜59歳の配偶者がこれに該当します。
国民年金の任意加入被保険者
国民年金に任意で加入している方です。
60〜64歳で国民年金の保険料の納付済み期間が480月に達していない方や、20〜59歳の海外移住者で国民年金の保険料の納付済み期間が480月に達していない方が該当します。
iDeCoに加入できない人
iDeCoの老齢給付金を受給している人や、したことがある人は加入できません。この受給には、一括受給も含まれます。(ただし、企業型DCGCの老齢給付金を受給している人や受給したことがある人の場合はiDeCoへの加入は可能です。)
さらに、老齢基礎年金を繰上げ受給している人も加入できません。特別支給の老齢厚生年金を受給できる人が繰り上げ受給している場合も含まれます。
iDeCoの掛金の決め方
iDeCoにいくら掛金をかけるかは、月々5,000円から1,000円単位で自由に決められます。自分のライフスタイルに合わせた無理のない掛金で、老後に備えましょう。
掛金額の変更は、12月分の掛金から翌年の11月分の掛金の間で年に1回だけ変更が可能。掛金の拠出停止はいつでもできます。
毎月掛金を拠出するのではなく、年に1回以上、自分で決めた月にまとめて拠出することも可能です。ただし、企業型DCに加入している場合には、年単位拠出が選択できないので注意しましょう。
それぞれのケースに応じて、対応策の検討が必要です。社会保険労務士法人中込労務管理では、各々の状況に応じてご提案をさせていただいておりますので、お気軽にご相談ください。
iDeCoの拠出限度額(掛金の上限)
iDeCoの拠出額の上限は、加入区分によってその額が異なります。
(1)国民年金の第1号被保険者
自営業者などが該当。
【掛金上限】68,000円/月
(2)国民年金の第2号被保険者
厚生年金保険の被保険者が該当。
・公務員以外で、確定給付型の年金および企業型DCに加入していない場合
【掛金上限】23,000円/月
・企業型DCにのみ加入している場合
【掛金上限】20,000円/月
(企業型DCの事業主掛金額との合計が55,000円/月の範囲内とする)
・確定給付型の年金のみに加入している場合、または確定給付型と企業型DC両方に加入している場合
【掛金上限】12,000円/月
(企業型DCの事業主掛金額との合計が27,500円/月の範囲内とする)
・公務員
【掛金上限】12,000円/月
(3)国民年金の第3号被保険者
専業主婦や専業主夫などが該当。
【掛金上限】23,000円/月
(4)国民年金の任意加入被保険者
【掛金上限】68,000円/月
iDeCoの運用方法
iDeCoの運営管理機関が選ぶ運用商品の中から、自由に組み合わせて運用することができます。運用管理機関は特定の商品をすすめることはできません。目標利回りや許容リスクなどを加味した上で商品を選びましょう。掛金額のうち、何%をどの商品に振り分けるかの配分も自分で決定します。運用商品は、定期的に見直しを行い、必要であれば変更も可能です。
iDeCoの受け取り方法
iDeCoで積み立てた資産は、60歳以降、老齢給付金として受け取りが可能です。受け取り方法は、以下の中から選択できます。
一括で受け取る
受給権が発生する60歳に達すると、75歳になる前の間で、一時金として一括で受け取ることができます。
年金として受け取る
年金としてiDeCoを受け取る際には、5〜20年以下の有期年金として受け取ります。受給を開始する時期は、75歳に達するまでの間で選べます。
一時金と年金とで組み合わせて受け取る
受給権が発生する60歳に達した際に、一部の資産を一時金として受け取り、残りの資産を年金として受け取る方法です。
iDeCoの受け取り開始年齢
60歳からiDeCoで形成した資産を受け取るには、60歳になるまでに、iDeCoに10年間加入している必要があります。加入期間が10年未満の場合には、受け取れる年齢が繰り下げられますので注意しましょう。以下が、加入期間に応じた受給開始年齢です。
・10年以上:60歳
・8〜9年(10年未満):61歳
・6〜7年(8年未満):62歳
・4〜5年(6年未満):63歳
・2〜3年(4年未満):64歳
・1ヶ月〜1年(2年未満):65歳
60歳を超えてから初めてiDeCoに加入した人の場合は、上記の加入期間を満たしていなくても加入から5年経過した日からの受給が可能です。
iDeCoを始める時の注意点
メリットの多いiDeCoですが、注意点もいつくか存在します。
iDeCoを始める際に注意すべき点を解説しますので、懸念点をしっかりクリアにしておきましょう。
原則60歳まで引き出せない
一番注意が必要なポイントは、原則60歳まで掛金の引き出しができないこと。
iDeCoを脱退することで、一時金を受け取れる場合もありますが、以下の条件を満たさない限り認められません。
・国民年金保険料の納付が免除されている
・通算拠出期間が5年以下
・個別管理資産額が25万円以下
掛金の積み立ての停止や金額の変更は行うことができます。
元本割れのリスクがある
iDeCoは、運用によって資産を増やすことができる制度ですが、その反面元本割れのリスクがないわけではありません。運用方法や運用商品は慎重に検討し、自己責任で行いましょう。元本確保型の運用商品もあります。
手数料がかかる
iDeCoの制度を活用するには、各種手数料がかかります。口座開設時の国民年金基金連合会への加入手数料として2,829円は、どこの金融機関で口座を開設しても支払う必要があります。
さらに、口座管理手数料、運営管理機関や事務委託金融機関に対する手数料も必要です。iDeCoを始める際には、各種機関の手数料をしっかり比較して決定しましょう。
75歳までに受給の申請をする必要がある
75歳までに受給の申請をする必要があり、申請されなかった場合には、法務局に供託されます。
加入者が死亡した場合・病気になった場合の対応
加入者が死亡した場合には、遺族が死亡一時金として受給できます。
また、75歳に達する前に、傷病によって障害を負った場合、傷病が続いた状態で1年6ヶ月が経過した際には障害給付金としての受給が可能です。
iDeCoに関するご相談は社会保険労務士まで
活用することで、節税をしながら老後の資産形成ができるiDeCo。毎月少額からでも拠出できるので、老後に備えておきたいという方は活用を検討してみましょう。
今回解説した「iDeCo」に関して、少しでも難しいと感じられた場合には、専門家へ相談することをおすすめします。社会保険労務士法人中込労務管理では、確定拠出年金制度に強い専門家が対応させていただきます。
人事と労務管理の専門家として、これまで各業種の企業さまへさまざまなサポートを提供してまいりました。顧問企業がお困りの際に「受け身」でご支援を行うだけではなく、こちらから「積極的に改善提案を行うコンサルティング業務」をその特色としております。人事労務にお悩みのある企業さまはもちろんのこと、社内環境の改善を目指したい方、また問題点が漠然としていてご自身でもはっきり把握されていない段階であっても、お気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。
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